新人MSWのみなさんへ

公開日: 2011/03/22 MSW



先日ご協力をお願いしたアンケートにて、3年未満のソーシャルワーカーの方からの質問や、入職を控えた学生さんからの質問も多くいただきました。お名前を伏せたうえで、引用させていただこうと思います。


「”新人MSW”を務めるにあたり、筆者様は何を大切にしてこられたか、また何から覚えようとしたか(今現在私は、医療保険と介護保険を見直しています)、ぜひ教えて頂きたいです。」というコメントをいただきましたので、これから現場に出る新人MSWのみなさんに向けて、ちょびーっとだけ先輩風を吹かせて、いくつか記させていただこうと思います。

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私自身も「現場経験の無い新人」でした。ヘルパー資格もありません。
正直、新卒で現場に出て最初の数カ月は、何をしていいかも、自分に何ができるかもわからず、右往左往する日々でした。今思い返すと、恥ずかしいことばかりですが、それでもその当時は、わからない自分、できない自分がいやでいやで毎日仕事を辞めたいと思っていました。


私の場合、社会制度のパンフレット制作や、社会資源のデーターベース制作、資料整理など、できることをやらせてもらいながら、担当のケースのスーパーバイズを上司にしてもらうというとても恵まれた環境での新人時代のスタートでした。


おそらく、色々な同業者の方の話を聞くに、1人職場でもない限り、新卒の新人を「即戦力」として考えている職場はほとんどないと思います。即戦力が欲しければ、中途で経験者を雇うでしょう。


新卒で現場経験の無い学生さんを採用したということは、採用した側が、学生さんのこれからの「のびしろ」に期待したからだと思うのです。「この人なら、ゆっくりでも、しっかりとソーシャルワーカーとして成長していってくれるだろう」という期待を込めて採用したのだと思います。


現時点で、できないこと、わからないことがたくさんあるのは当たり前ですし、それを不安に思うのもわかります。ですが、わからないことは現場に出てから、学び、教えてもらえばいいのです。あまり心配しすぎず、自分が思い描く理想のソーシャルワーカー像を、楽しくイメージして、英気を養えばいいと思います。いいイメージはいい仕事に繋がります。よく言うイメージトレーニングをして、自分のモチベーションを保つこともとても大切なことですよ。


知識に関して言えば、私自身も社会福祉試験には合格したものの、試験勉強で詰め込んだ知識が実務にすごく役に立った!という記憶はありません。ソーシャルワーカーってホントOJT(On the job training)に頼ってるなぁといつも思います。




あまり心配せず、といっても心配でしょうし、そんなマジで新人一週間前!?な、みなさんにちょびっとだけ先輩なわたしから言わせてもらうとすれば


①何事にも正直に、真摯に、謙虚に!
わからないときは、不確かなことは決して口にせず、面接を中断してでも、正確な情報を調べて、伝えるようにする。自分を飾らず、真摯に、謙虚に、関わる方たちすべての人に敬意を持って接しましょう。簡単なようですごく難しいことです。


②あいさつをしよう!!
すれちがったら必ずあいさつ。無愛想なドクターとか怖い看護師さんにもめげずに、笑顔であいさつしていきましょう。あいさつは全ての基本です。チームコミュニケーションの基本でもあります。


③他職種の人たちをきちんとコミュニケーションをとろう!
ソーシャルワーカーが一人でできることはとても少ないです。
色々なスタッフと協働して患者さん家族に関わることで、より一層厚みのある関わりができるようになるのだと思います。わからないことは聞きましょう。新人のうちならきっと優しく教えてくれるはずですよ。


④制度の勉強
知識の詰め込みだけではなく、どのように伝えるかも大切です。
知識を詰め込んでも、実際の面接の場で目の前にいる患者さん家族に合わせて、言葉を選んだり、説明するのは、暗記して試験勉強に臨むのとはわけが違います。職場の上司や、親や友達に対して面接のロールプレイングをお願いして練習してもいいかもしれませんね。
参照:伝える側と聞く側の間に生じる前提条件について


まぁ、上記のことは、大先輩方もよく言っておられるでしょうし、きっと大学の先生にご相談されても、同じようなアドバイスをしてもらえるのではないかと思います。


最後にお伝えしたいのは、言語化せよ!表出せよ!ということです。
自身の実践や、考えたこと、思ったことを書き記したり、誰かに伝えたり、「表出」する作業を出来る限り、継続するとよい、ということです。


1年目に悩み、感じ、考えたことを言葉にして残しておきましょう。誰かに見せることを前提でもいいですし、、まずは自分のメモとしてでもよいでしょう。学んだこと、覚えた知識などではなく、あくまで「自分の頭で感じたこと、考えたこと」を書き記すことをお勧めします。


1年目に感じたことを、1年目の言葉で書き記すことが出来るのは、1年目のときだけです。3年目になって、1年目のことを記憶から引っ張り出して、書き記そうとしても、それは3年目の言葉にしかなり得ないのです。


ソーシャルワーカーは、クライエントにとっての「チェンジ・エージェント」でもあります。チェンジ・エージェントとは、変化を担保する人、変化のプロセスを共に歩む人、というような意味です。


目の前の患者さん家族の「変化」に敏感に、アンテナを高くするには、まずはソーシャルワーカーが、自分自身の変化に敏感で、かつ、その変化を言語化するという体験を有しておくことがとても大切なのだと思っています。


ソーシャルワーカーは、生活上のなんらかの危機に直面した人と出会います。
それがクライアントです。


クライアントが直面する危機とは「危険」であり「機会」でもあります。(個人的な・・・持論です)


Danger or  Opptunity
生活を脅かす危険(Danger) or それを乗り越えていくという機会(Opptunity)


危機に直面したクライアントに対峙するソーシャルワーカーは、クライエントと共に、クライエントが危険(Danger)を機会(Opptunity)に変化させていくことができるために、多種多様な方法を用いて、援護射撃を行うのです。




と、前置きが長くなりましたが、「チェンジ・エージェント」としてのソーシャルワーカーの役割を遂行していくためには、「人間が変化するとはどういったことを意味するのか?」という問いに対して、ソーシャルワーカー自身がいくつかの見解を有しておくにこしたことは無いのです。人間の変化と言っても、身体的、精神的、社会的、宗教的・・・・数えたらいくつもでてくるかと思います。


「人間が変化するとはどういったことを意味するのか?」という問いに対するエクササイズを行うには、自分自身を題材とするのが一番身近で、ローコストでよい方法です。


だから、まずは、書き記しましょう。言語化し、他者に対して表出しましょう。
それが、一番の「変化とはなんぞや?」について知るためのトレーニングになります。




繰り返しますが、1年目に感じたことを、1年目の言葉で書き記すことが出来るのは、1年目のときだけです。3年目になって、1年目のことを記憶から引っ張り出して、書き記そうとしても、それは3年目の言葉にしかなり得ないのです。



日記でもいいですが、「今日なにをした」ではなく、「今日は何を考えた。感じた」ということにフォーカスして、書き残し、それを1ヶ月後、3ヶ月後、半年後、に見なおしてみると、自分がどのように変化をしてきたのか、ということを知る大きなヒントになっていると思います。


人生は、長い線のようなものです。
自分で意図的に「点」を残してあげる(書き記す)ことで、線は、有意な点の集合体としてその人の目の前に現れてきます。


ソーシャルワーカーとしてのキャリアも、長い線のようなものです。
職業的な成長の過程を、自分自身で言葉にし残しておくことは、自身の変化を知る大きな材料にもなりますし、そしてまた、自分よりも後に現場に入ってくる後進のソーシャルワーカーたちにとっても、学びを提供できる材料になるかもしれません。


と、この春から5年目になる私が新人時代を振り返り、これから「新人MSW」として現場に出ていかれる方々に向けて、少しでもプラスになればと思い書き記しました。


私事ですが、春から、職場を新たに、環境を変えてスタートをすることになりました。ソーシャルワーカーは5名。どうやら後輩もいるようです。新人MSWのみなさんと同様、フレッシュな気持ちで自分自身も頑張っていこうと思います。


ソーシャルワーカーはおもしろい仕事です。
後輩の皆さんが、全国各地で奮闘されることを願ってやみません。
健康に気をつけて、共に頑張りましょう!!


【おすすめエントリ】
ソーシャルワーカーが面接技術を学ぶ上で読んでおきたいお薦め書籍 5選
話を聴くために必要なことシリーズ1-面接導入編-



【おすすめ書籍】
以下、個人的におススメする書籍を紹介しておきます。


身体知と言語:奥川幸子氏


面接法:熊倉伸宏氏

面接法2:熊倉伸宏氏


医療福祉総合ガイドブック 2012年度版
診療科別患者さんにそのまま見せる医療福祉相談の本
社会保障便利辞典
生活保護手帳
診療報酬点数早見表



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