専門職としての姿勢・態度について考える
公開日: 2012/03/24 MSW
医療機関に受診をするたびに、対応してくれる医療者が「自分の名を名乗る」ことが患者に与える「信頼感」というのが思った以上にあるのだ、ということに気づきます。目の前にいる人間に多くの権威的な肩書きがあったとしても、「肩書きだけで、その人間が信頼に値するという判断をするには至らない」ということを多くの人は経験的に知っています。
ということは、自分たち対人援助職もまた、当然のことながら「肩書きだけで、その人間が信頼に値するという判断をするに至らない」という評価の中にいるのだということになります。
本エントリでは、「専門職としての姿勢・態度について考える」と題し、上記を踏まえた上で、対人援助職としての姿勢・態度がもつ意味について考えていこうと思います。
1.『専門性の中に「姿勢・態度」が包括される』のではなく、『「姿勢・態度」が専門性の入り口』となる。
医療機関に限らず、サービス受ける際に、サービス提供側が「自分の名前を名乗る」ことで、サービスの受け手側に与える印象は違ってくるのだと考えています。
「わたしという存在の根拠としての記号である名前」を「目の前にいる他者に表明する」という行為は、「自分を意識して、他者に向き合う」というコミュニケーションの「照準合わせ」なのだと思います。
「自分を意識して、他者に向き合う」というコミュニケーションの「照準合わせ」をすることは、対人援助職にひきつけて言えば、バイスティックの七原則の「個別化」に通ずるのだとも思うのです。
名前を名乗るというのは、ひとつの例に過ぎませんが、「専門性」が見えづらく、可視化しづらい職種は、サービス提供側と受け手側の「情報の非対称性」が顕著なので、サービスの受け手側が、「ああ、この人は【専門性】があるし、素晴らしくて信頼に値する」という論理になることは、ほとんどないのではないかと思います。
ですので、『専門性の中に「姿勢・態度」が包括される』というのは、サービス提供側の論理であって、受け手側の論理は『「姿勢・態度」こそが、専門性を推し量るための入り口』ということになるのだと思うのです。
2.姿勢・態度が、サービスの受け手側の「専門性」のイメージを強化する。
サービスの受け手側にとっては『専門性の中に「姿勢・態度」が包括される』のではなく『「姿勢・態度」こそが専門性を推し量るための入り口』となる。
このことを対人援助職が履き違えると「大切なこと」を「些細なこと」と切り捨ててしまいやすくなります。
キャリアも論文も学位も、対人援助職として現場に立った瞬間に、サービスの受けて側にとっては、ほとんど意味をもたないものになる。いや、無意味と言っても差し支えないくらいなものになります。
逆説的ですが、「専門家的である」ということではなく、「姿勢・態度」によってサービスの受け手側が「ああ、この人は信頼できるかもしれないな」と思った瞬間に「態度・姿勢を入り口とする専門性」が受け手側に与える効果は倍増するのだと思うのです。
つまりは、『専門性を推し量るための入り口』である「姿勢・態度」を対象者に向けることにより、
「この人は信頼できる人だから、この人の言うことであれば…」という思いがサービスの受け手側に「存在している」時点で、そこには「専門家として提供できるもの」を、サービスの受け手側に「最大限に提供するための状況」が生じているのです。
その結果、姿勢・態度が、サービスの受け手側の「専門性」のイメージを強化することになるのです。
3.『専門性を推し量るための入り口』である「姿勢・態度」を体得するために
サービスの受け手側にとっては『専門性の中に「姿勢・態度」が包括される』のではなく『「姿勢・態度」こそが専門性を推し量るための入り口』となる。
という冒頭の私の考えは、端的に「この人が言うことだから信頼できる」という関係性の構築が「対人援助」においてもたらす意味をもっと重要視して考えましょうよ、その前提としては「姿勢・態度」が大切です、という基本的なところに帰着します。
『専門性を推し量るための入り口』である「姿勢・態度」と体得していくためには、常に謙虚な気持ちと、少しばかりの自信が必要だと個人的には思っています。
現場で専門家的に振る舞う時間が長くなる(キャリアを積めば積むほど)ほど、「矮小な個としての自分」を感じさせてくれる他者や場を持つことの大切さに気づきます。
「ああ…自分はまだまだだ」
そう思わせてくれる存在や場があること。
私にとってはこの仕事を続けていく上でとっても大切なことだと思っています。
適度な劣等感を与えてくれる存在が、もしあなたの近くにいるのならば、その人との関係を大切にされることを個人的にはお薦めします。
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