ストーリー買いをする時代-サービス業の仕事から-

公開日: 2012/02/04 MSW SW解体新書制作委員会 思索

物を買ったり、サービスを受けたりするとき、いつもは対人援助サービスの提供者側にいる自分が、サービスの受け手側になります(当たり前ですが)


「自分がいいな!と思ったサービスや物を気持ち良く受けたり購入したりして満ち足りた気持ちで店を出る」というストーリーをお客さんと共に創り上げるという信条で接客をしているかそうでないかということは、悲しいかな、日々、シビアな現実と向き合わざるを得ないお客さん(クライエント)と対峙する対人援助職であれば、一発の接客で見抜ける(自信がある!)わけです。


と、クソ偉そうな前振りですが、本エントリでは種々のサービスを受ける際に感じる諸々について、『ストーリー買いをする時代-サービス業の仕事から-』と題し、記していきたいと思います。

1.サービスを提供する側、受ける側の間に存在する情報の非対称性に意識を向ける



対人援助職として、日々患者さん家族と関わる中で、両者の間に存在する種々の情報の非対称性について意識を向けない日はありません。ですが、これはサービスを提供する側、受ける側という関係性が生じる場面全てに存在するものだと考えています。

例えば洋服を買いにお店に行った際に、受ける接客について考えてみます。


「これは今流行のナントカカントカ仕様で〜」
「芸能人の○○がプロデュースしていて〜」


意味不明の横文字などを多用してくる店員さん。


客の全てが流行のファッションとか用語を知っているわけではないということを前提条件として考えていないんだなということがわかります。まず、店員さんが、客の洋服に関して有している情報や知識を「見積もる」という作業をしているかそうでないか、ということは店員さんの接客レベルを推し量る重要なファクターとなるなーと思っています。


その時期の流行やファッション的な組み合わせの是非、タブー等をお客さんが知っているとは限りません。「情報の非対称性」を前提に接客をしているかということについては、店員さんからの声かけがどのようなものかで推測が出来ます。


自分たちの店の商品については、それを売る自分たちが一番良くわかっているのは当たり前。その知識的な部分を接客に織り込むよりまず先に、客のニーズに対して、自社の商品を含めたサービスがどのような提案ができるか、ということを第一に考えることができないと、「客のニーズ」を理解するに至らないのだろうと思うのです。


「ああ、この店員さんなんか雰囲気とか声かけとかがいいなー、心地よいなー」と感じる店員さんのほとんどはきっと上記についてのご自身なりの哲学みたいなものを持っているのだろうなーと密かに尊敬するとともに、自分の仕事に取り得れようとほくそ笑むわけです(笑




2.客のニーズを理解し、それに提供できるサービスを提案する


自分がいいなーと思ったサービスや物を気持ち良く受けたり購入したりして満ち足りた気持ちで店を出る」ってストーリーをお客さんと共に創り上げるというのは、構造的には以下の3つのプロセスを経ることだと、自分の仕事に引き付けて考えています。

客のニーズを理解する 
 
ニーズに対して提供できるサービスの提案をする 
 
客と共にストーリーを創りあげる

その過程で、物が売れたり、お金が落とされたりする。
このプロセスを踏まなくてももちろん物は売れるし、お金も落とされるとは思いますが、「客と共にストーリーを創り上げる」ということに意識を置くことは、すげー端的に言うと「リピーター」を増やすことに繋がると思うのです。


「ああ、またこの店員さんからモノを買いたい、サービスを受けたい」


そう思わせるには、上記の「客のニーズを理解する」「ニーズに対して提供できるサービスの提案をする」「客と共にストーリーを創りあげる」のプロセスを突詰めて考えるべきだと思うのです。(これについては長くなるのでまた別エントリで記したいと思います)


このプロセスを突詰めて考え、踏めるようになることで、サービスの受け手側がモノやサービスを「ストーリー買い」することに繋がると思うのです。ストーリーには続きがあります。サービスを提供する側と受ける側にストーリーが生まれることで、そこには関係性が生じます。そしてその関係性が次に繋がり、リピーターとなるのだろうと考えています。



3.対人援助職が日々のサービスの受け手側になる時間から学べること


同業者の方はきっと、上記を読まれて、自分たちの仕事と同じじゃねーかと思われたのではないかと思います。サービス業において、上記の構造はそこに付随するものが異なるだけで本質はあまり変わらないのだと個人的には思っています。


接客について話題を戻しますが、概して、高級店と呼ばれる店では店員さんの接客も変化するという実感を持っています。


「冬物一押しアイテムで、これは買いですよ!」という押しつけや、客の話もろくに聞かないで、店員さん論をガシガシ押し付けてくることはありませんし、「まずはお客さんのニーズを傾聴する」ところからはじまり、意味の無い横文字は使いませんし、「季節モノ」的な押しつけもない。


これは美容室とかマッサージとか、そういった「専門的知識」有しているサービス業にも言えると思うので、ソーシャルワーカーたちは修行の場を求めて街に出るべき!っていうことを新人1年目くらいの時に思い、色々と買い物とか行くたびに、接客から学んでいたことを思い出します。


学びはそこらへんに幾らだって転がっています。自分の意識がなければただの石ころでも意識を持つことでいろんなものに変化するはず。自分の意識の持ちようで、どんなことからだって学びは得られる。って言う風に考えられるようになってから、仕事がより一層楽しくなったなと思います。



4.サービスを提供する側が学ぶべき7つの原則


ソーシャルワークの業界で、有名な「バイスティックの7原則」というものがあります。以下の7つの原則こそが、対人援助職であるソーシャルワーカーが援助過程において実行すべき原則であるということを記した大著です。



1.個別化
2.受容
3.意図的な感情表出
4.統制された情緒的関与
5.非審判的態度
6.自己決定
7.秘密保持


別エントリで改めて、上記7原則に照らし合わせ、客のニーズを理解する」「ニーズに対して提供できるサービスの提案をする」「客と共にストーリーを創りあげる」という3つのプロセスについて記していきたいと思っています。


ご興味のある方は以下をご参照ください。





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