ソーシャルワーカーと患者さん家族との間に生じる非対称的な関係性について考える

公開日: 2012/01/14 MSW SW解体新書制作委員会 思索

医療機関に勤めている同業者から時折、「白衣は権威性の象徴だから、ソーシャルワーカーは白衣を脱ぐべき、ユニフォーム、私服でよいのでは」などという声を耳にすることがあります。


これは「援助者とその対象者という構図」にある非対称的なソーシャルワーカーと患者さん家族の関係性を「同じ目線」で構築していくために、権威性の記号(白衣のような)が少しでもあるものは取っ払うべきだという論拠からくるものです。


私自身も、上記については特段異論はありませんが、かといって白衣などのビジュアルイメージが与えるメッセージがどこまで、非対称的な関係構築に影響を与えているのかはわかりませんし、単純に、白衣=権威性の記号=非対称的関係性という等式が導かれるとは思っていません。


本エントリでは、「ソーシャルワーカーと患者さん家族との間に生じる非対称的な関係性について考える」と題し、そもそも、ソーシャルワーカーと患者さん家族の関係性が「非対称的である」ということを前提においた上で、それをどうほぐし、解体してくべきかということについての個人的な考えを記していきたいと思います。




私は日々、患者さん家族に対して、意図的に「提案、ご相談なんですけれど」と「前置きワード」を口にした上で、患者さん家族の意見、考え方を尋ねたり、教えてもらったりすることをよくします。


私個人としては、援助者側が患者さん家族のリアル・生活問題をどのように捉えているか、それに対して何を考えているかということについてを「提案、相談なんですが」という前置きをすることで、患者さん家族に「この問題たちをあなたとわたしで一緒に考えていく」というメッセージを送ることが出来るひとつの方法なのだと考えています。


「提案なんですが、相談なんですが」という前置きワードを用いることは、一旦、対象となる人に「援助者側の色を付けて、問題に対する対処の方法等をお返しする」っていう態度表明でもあり、それと同時に「共に色を付け合って、この問題の全体像を描いて、どのようにしていけばよいかを一緒に考えていきましょう」というメッセージを込めたメタファーでもあります。


情報の非対称性が強い医療の現場では、より一層ソーシャルワーカーと患者さん家族との間には「同じ目線」が生じにくいのは明らかです。(生じ得ないと断言してもよいかもしれません)


けれども、生活問題については「その人が体験している、生きている今というリアルを援助者は超越できない」わけですから、そこは分けて考えるべきだと思うのです。


対象となる方に認知症等があり、「自身の生命の危機」に直結する問題の判断、対処がご自身だけでは出来ないという場合は別として、「体験している、生きている今というリアル」そしてその積み重ねである価値観は、対象となる方の今まで生きてきた道程の中で形成されてきたものです。


ですから、それを軽視し、一方的に援助を押し付けても、一時の問題解決にはなるかもしれませんが、対象となる方の問題解決能力(この言葉は嫌いなんですが)、つまりは、ご自身で困ったことに対処して解決まで持っていける力に対してアプローチすることにはならないと思うのです。


その上で「相談なんですが、提案なんですが」等という前置きワードを用いる態度は意味を持つと考えます。これは、ソーシャルワーカーと患者さん家族の構造的に避けられない非対称的な関係を括弧に入れた上での考え方です。


もちろん、そういった前置きワードを使うときには「それなりの意図(根拠)」がなければなりません。「色を塗るためのアウトラインさえ見えない状況(問題がごちゃごちゃして整理する道筋が見えていない状況)」で「色を付け合って問題の全体像を描いていきましょう」なんて言うのはただの援助者の怠慢と自己満足でしかありません。


共に、対象となる人の「どうにかしなければならない問題たち」を整理して、まずは何に手をつけていけばよいのかという「色を塗るためのアウトライン」を共に描く。


それができてはじめて、恊働作業としての「相談なのですが、提案なのですが」等という、非対称的な関係を括弧に入れた上での前置きワードは意味を持つのだと思うのです。


関係性はさまざまな要素により変化していくものです。


そして、患者さん家族とソーシャルワーカーの関係性は、「目的を持った関係性」です。
その目的をまずは共有するために、出来ることを考えるべきだと思うのです。
そういった思考のプロセスを持たないと、「関係性ありき」論に終始してしまうのです。


「患者さん家族とソーシャルワーカーの関係性は問題解決を果たすためのツールである」


というところから、思考プロセスをスタートしてみると、違った援助のイメージを展開できるかもしれません。


思考を想像力のジェットコースターにのせてみる。
それを日常的な遊びにしてみる。それってけっこう楽しいことですよー、と思ったりしています。


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