バーンアウトを防ぎたいと思った理由について

公開日: 2011/12/03 MSW SW解体新書制作委員会

2年目の頃、懇意にしていた同業者の男性から職場を辞めるという連絡が来た。他業種からこの世界に飛び込まれた方で、年齢は自分よりも先輩。素地のある方だなーと思える人で(偉そうですいません)、互いの未来をよく一緒に語り合った仲だった。


彼からの突然の「辞める」報告には驚くというよりも、当時は悔しくて悔しくて仕方なかった。今ならその悔しさの意味が少しはわかるのだけれども、当時は「仲間が去っていく」ということが悔しくて悲しかった。引き止めたけれども、彼の決意は固かった。


話を聞くと、医療機関という組織の中で、もがけばもがくほど息ができなくなっていくという状況にいたことが理解できた。つまりは「ソーシャルワーク」をさせてもらえない環境。部署に力が無く、雑用、理不尽な業務のすべてを押し付けられていた。


彼からその話を聞いたとき、なんて自分たちには力が無いのだと、悔しくてしかたなかった。医療機関におけるソーシャルワーク部門は弱小部門であることが多い。上層部、他職種にきちんと「理解させるに値する実践」を諸先輩方は必死こいてやってきたのかという疑問が生まれた。


医療機関がソーシャルワーク部門を設置する理由の多くは「在院日数短縮」のため。社会的問題を抱える患者さんを早期退院させれば、雇い主である管理者からは評価される。そこでうまく立ち回れれば、とりあえず組織の中では這いずり回って生き残れる。


組織の中で這いずり回り生き残ることを選択する同業者が多くなれば、そこで提供できる患者さん家族の利を追求した「根拠ある実践」は薄れていく。薄れたものは容易には戻らない。組織の中で「安住の居場所」を得ることができれば、それほど楽なことはないから。


冒頭の彼の職場は、まさに「根拠のある実践」が薄れに薄れた職場だった。彼が真摯にソーシャルワークと向き合い、薄れた実践を取り戻そうとしようとも、現場経験の無い彼の力だけでは、部署内、組織内と戦うには「武器」が無さ過ぎた。


「武器」というのは「根拠ある体系化された実践」に他ならない。所属機関で「結果」を出し、職業的価値・倫理に則り仕事するには「根拠ある体系化された実践」という武器を持たねばならない。2年目の自分と1年目の彼にはそれが皆無に等しかった。


彼と自分が、あのとき「武器」を持ち合わせていたら、この結果(彼が辞めるという)は変わっていたのだろうかと思った。そう思うと悔しくて悔しくて仕方なかった。


今後この世界に足を踏み入れる若い人たちのために、まずは自分たちが武器を持たなくちゃならない。武器の見つけ方、磨き方、手入れの仕方、どれひとつとして「同じ方法」は継承はできないけれど、「扱い方」であれば、継承できるはずだと思った。


だから、ソーシャルワーカーが自らの武器:「ソーシャルワーク実践解体新書」を描いていく過程に関わり、根拠の薄れた実践から自分たちの実践に対する誇りを取り戻し、後進に継承できる実践知を残すために今自分にできることをしたいと思った。




自らが志して、選んだこの仕事に誇りを持って、長く続けていけるように。
そのために、自分ができることを少しずつやっていきたい。そう思っています。





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