ストレングス・アプローチにおける個人的見解

公開日: 2011/08/25 MSW

制度スタート時に比べ、ケアマネは変わった――白澤教授セミナー2(ケアマネジメントオンライン)にて、桜美林大学教授・日本ケアマネジメント学会副理事長の白澤政和先生が「ストレングス・ケアマネジメント」について触れています。


以下、同サイトより抜粋
白澤氏は、ケアマネジメントの目的は、「利用者のQOLを高める」、「利用者の能力を高める」、「利用者のために事業者に弁護する」といった“利用者のため”と、「財源を守っていく」ためという両面があると指摘。ところが、「5年前頃から、財源抑制機能が強くなってきた」(白澤氏)。

「前回の法改正で、介護保険スタート時とは、ケアマネは変わった。『回数を減らせ』、『ベッドを返せ』と言わざるをえなくなって、利用者さんに国の回し者だと思われたり、ケアマネ自身も仕事が楽しくなくなったのでは?」と問いかけると、多くの参加者が頷いていた。

白澤氏が今後のケアマネジメントの方法として紹介したのが、「ストレングス(強さ活用)モデル」。「○○ができない」、「意欲がない」、「自信がない」、「好みがない」、「地域から孤立している」など、マイナスから利用者を捉えている人は多い。

一方でストレングスモデル・ケアマネジメントとは、前述のようなマイナス面だけではなく、「○○ができる」、「○○をする自信がある」、「○○をしたい」、「○○が好きである」、「○○をしてくれる人がいる」といったプラス面もアセスメントし、ケアプアンに反映させるという方法という。

「マイナス面に着目しがちですが、好きなこと、強いことに着目し支援すると、人は自ら動いてくれる」と白澤氏。

さらに、相手の意欲を高めるためのポイントを教えてくれた。

第1のポイントは、「些細なことから、自己決定・選択を支援する」こと。「あなたに任せるから」と言われることは多いものの、些細なことから利用者に選んでもらうようにし、「うまくいったら、『あなたが決めたからうまくいった』と伝えること」と白澤氏。

第2のポイントは、「したいこと」「好きなこと」「できること」を言える雰囲気をつくるということ。「なんでも言ってください」「一緒にやりましょう」と声をかけることが大事。

第3のポイントは、利用者が自信を得ていくコミュニケーション技術を活用すること。具体的には、「前に○○をして良かったと聞きましたよ」、「じゃあ、今からスタートできるんですね」などと、自信をなくして現実を否定的に捉えている利用者に対し、肯定的な解釈をすると良いという。

第4のポイントは、具体的な短期の目標を設定すること。利用者がしたいことに関する目標を立て、その結果を一緒に喜び、リスクを減らすことが大事と伝えた。

こうしたことを説明した上で、「ただし、本人の価値観を変えることができないので、意欲がでない利用者についても、受け止めることが重要」と、白澤氏。
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本当に実践知に溢れている言葉でとても勉強になります。
本エントリでは、ストレングス・アプローチについての個人的な考えを記しておこうと思います。

ストレングス・アプローチについて語られる際、「対象者の良いところを見つける」「対象者の強みを焦点化する」などの表現がされますが、個人的にはその表現自体が「診断主義」の尻尾を引きずってるのだと感じています。

借り物の言葉に依存して、自身の言葉で既存の言葉を再定義することを怠ると、様々な事象に「WHY」という疑問符を投げかけられなくなってしまいます。

ストレングス・アプローチにおけるスタートラインは「その人の中に尊敬できる何かを見つけること」ということなのだと思っています。

約束の時間の5分前には必ず来室する。
笑顔を絶やさない。
相手に対する気遣いの言葉を忘れない。
雰囲気の作り方が優しい。
家族を大切にしている。
仲間を大切にしている。
自分を飾らない。

etc....

些細なことでもいい。その人の尊敬できるところを見つけるところからスタートする。
その人がどんな人間なのかということに切り込んでいく、その切り口を「尊敬できるなにかを見つけること」とし、それをその人の人物像を形作る核(コア)としていく。

私は上記のような「その人の中に尊敬できる何かを見つけること」を切り口として、その人の人物像を形作っていくプロセスを「尊敬ベースのコミュニケーション」と表しています。

ストレングス・アプローチというのは、言い換えれば、「尊敬ベースのコミュニケーションを基底に置くアプローチ」なのだと思うのです。

良いところを見つける、強みを焦点化するっていうのは「評価・診断ベース」であって、「強みを焦点化して、その人の変化や成長を促していく」というような文脈で語られる時、そこにはその人に向けられる「敬意」の欠落があるように思えてならないのです。

敬意」は「他者に向けられる敬いの意思」なのだと思います。
誰かから敬意を向けられることは、すなわち、「承認する、される」という人間の承認欲求にダイレクト・インすることでもあるのだと思います。

「マイナス面に着目しがちですが、好きなこと、強いことに着目し支援すると、人は自ら動いてくれる」

白澤先生のおっしゃるこの一文には、

『尊敬ベースのコミュニケーションを基底に置くアプローチであるストレングス・アプローチによって、「承認する、される」という人間の承認欲求にダイレクト・インする「自分に向けられた敬いの意思」が、その人の内的動機付けに働きかける。』

だから、「自ら動いてくれる」ということなのだと解釈しています。


長々と書き連ねましたが、個人的には、日々出会う患者さん家族に「尊敬ベースのコミュニケーション」で関わらせてもらうことを意識化することで、仕事がとっても楽しくなるんですよ、ってことを一番強調して伝えたいわけです(笑

背伸びして専門家ぶると、大事なことを見落とし、そして学べる材料が減っていきますよって経験年数の浅い同業者の方にお伝えしたいです。

楽しく、仕事しよーぜ
学びを累乗的に増やしていける仕事への向き合い方を考えよーぜ

と、そんな意図を込めた今回のエントリでした。
明日で週末!!明日もがんばるぞ!!



【参考書籍(白澤政和先生の著作です】









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