アセスメント力を鍛えるためのトレーニング
公開日: 2011/08/15 MSW
「さて、インテーク面接が終わった。ええとアセスメントは…」と個々のケースのついてアセスメントを行う以外にも、アセスメント能力を鍛える方法はあると考えています。
それは「常にモノゴトの結論とその根拠を考えよう」ということです。
職場で上司に報告をしたり、他部署のスタッフと情報共有をする際に、どのようにモノゴトを伝えているでしょうか。
5年目の自分から言わせてもらうとしたらまず最初に気をつけるべきことはひとつ。
先にも述べたように「結論から伝えよう。」ということです。
相手が自分とのコミュニケーションに割ける時間はこちらにはわかりません。まずはじめに「相手にどのくらいの時間をとってもらえるか」を確認してから、結論を伝えることは、相手の時間を尊重する行為でもあります。(忙しいDrやNsにタラタラとストーリーを伝えて、「で?結論は?」とカウンターパンチを喰らったことのある新人さんも多いのではないでしょうか…自分も多分に漏れずその一人でした。笑)
なので、1年目は以下を心がけました。
例えば上司に報告、相談する際には
「○○の件について、私は△△と考えているので、□□しようと思うのですが、どうでしょうか」
他職種と情報共有、報告する際には
「○○の件ですが、□□ということになりました(△△という理由で…)」
と端的に伝えることを心がけると、相手がもっと情報を知りたい場合には「その理由は」「なぜ」と問うてきますし、その必要性がないと判断されれば「OK」となります。
例えば、
「○○の件で、△△ということがあって、それによって□□をして…ということで××ということになりました」
というように、起承転結の流れで話をした場合、相手は最後まで話を聞かなければ、結論に辿り着けません。「話が長いなー。めんどくさいなー。」と思われないためにも、起承転結パターンは実践現場では使用を控えたほうがいいでしょう(笑 もちろん、事例検討などの場合にはとっても大切ですけれども、ね。)
まとめると
まとめると
- 結論から伝えよう。
- 結論を導きだした理由を問われた際、相手を納得させることの出来る根拠を持っておこう。
- 抽象的な言葉を使うのを止めよう。(時間の程度を伝えるのであれば、「早め」、「遅め」ではなく「具体的な時間(ex :何時間、何日など)」と伝える。」
- 自分の知っている情報が「いつの時点での情報か」ということを常に意識しよう。(○○さんがこう言っていましたの「こう言っていました」がいつの情報か?ちゃんと意識しておきましょう)
- 主語をはっきりさせる(「家族」がこう言っているのではなくて、その家族が「妻」なのか「長男」なのかはたまた「長女」なのかはっきりさせよ)
上記は、他者の時間を尊重するということ以外にも、自分の考えをきちんと整理した上で他者に伝える、というトレーニングにもなるわけです。
アセスメントを行う上で、クライエントの情報を得ることはもちろん大事ですが、その情報を組み立てる上で、情報の積み重ねからどのような結論が導かれたのか、というアセスメントの過程を「他者に説明できること」はそのアセスメントに妥当性を持たせることでもあるのです。(アセスメント自体に疑問符がつくのであれば、その意を他者に表明してもらえるわけですから。そもそも他者に説明できなければ、アセスメントとは呼べないわけです。)
アセスメントシートを埋めたからアセスメントが出来るわけではないということは多くの現任者の方達が実感としてわかっていることだと思います。
日頃の情報共有の仕方や、自身の考えを表出していく際のプロセスにきちんと意味を置き、その行為を成しているかどうかが結果として、アセスメントを行う能力を向上させるために役立つのだと思っています。
ナラティブを重視し、大切にしたいと思うのがソーシャルワーカーの性(さが)だと思うので、ストーリーで語りたくなるのはわかりますが、ナラティブ・アプローチは、経験の語り直しという語りのプロセスを重視するものであるので、「クライアントの語り自体」を情報共有するという視点は、チーム医療においては歓迎されないものだと思います。
(参照:ナラティブ・アプローチにおける個人的見解)
「クライアントの語り」を共有するのではなく、
「クライアントの語りの過程を含めた、客観的な事実により形作られたアセスメント」を根拠に持ち、それに基づいて「どのような目的に向かって、ソーシャルワーカーとしてどのように行動をしていくか。そして他職種にどのようなアクションを起こしてもらうよう働きかけるのか」というプランを共有すべきなのです。
まずは「結論から伝えよう」
そして、「結論に至った根拠」を持とう。
問われれば、「結論の根拠を明示できるようにしよう」
その積み重ねで、アセスメント力は確実に鍛えられると個人的には実感しています。
アセスメントのおそらく7割以上は、客観的な事実を論理的に組み立てる行為なのだと思います。
客観的な事実を論理的に組み立て出来たモノに、クライエントやそれを取り巻く人々の様々な事実や対象に向けられる感情や、そこに生じる関係性を網のように組み入れていくことで、アセスメントが成されるのだと個人的には定義しています。
アセスメントの7割は、地道な努力で鍛え上げることが可能なもの。
そして、その一助として、本エントリでお伝えしたような一般的な方法を記させてもらいました。
あとの3割の部分は、奥川幸子先生の言うところの「アート」としての技術なのだと思います。
奥川先生の職人芸に及ばないとしても、凡人で7割いければ万々歳でしょう。
そう考えたら努力するしかない。7割いける素地が誰しもあると考えれば、それを目指さないわけにはいかない。
漫然としたルーチンに流されずに、自身の課題を克服するための具体的な行動に落とし込む作業をすることを忘れず、日々精進していきたいものです。
【アセスメント力をあげる必須の2冊です】
【参考書籍】
当ブログで幾度も紹介させていただいた奥川幸子先生の大著です。
今までも、そしてもしかしたらこれからも、実践を共有知へと昇華させるためにこれほどまでに注力された書籍はないかもしれません…本当に。
上記「身体知と言語」の前に読まれることをお勧めします。
奥川ワールド入門の1冊です。
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Blogエントリ目次:当Blogのエントリをカテゴリ別にまとめました。
「ソーシャルワーク言語化のススメ」:メールマガジン刊行中です。
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簡単な事例を用いて、アセスメントを行う際に留意すべきことを学ぶことが出来ます。
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