奉仕の精神がなければソーシャルワーカーの仕事は続けられませんか?
公開日: 2011/07/23 MSW
「奉仕の精神がなければソーシャルワーカーの仕事は続けられませんか?」上記は、職場に見学実習に来た学生さんから問われた一言です。その一言には、学生さん自身の葛藤が滲み出ていていました。とても真剣な面持ちでそう言った彼女に対して、微笑ましさと共に尊敬の念を抱きました。
「奉仕の精神がなければソーシャルワーカーの仕事は続けられませんか?」
この問いが学生さん自身の中に生まれているのは、「なぜ自分は対人援助職につこうと思っているのか(思ったか)」という問いに対する自身を納得させるための理由を探っているからなのだと思い、
「なぜ、そう思うのか?」と問い返しました。
個人的な見解として、
『奉仕の精神はあってもなくてもきっとやっていける。この仕事は、数多いる人間の数ある人生の一時に立ち会える、素晴らしく、楽しい仕事だ』
という言葉をその問いに返すことは簡単なのですが(笑)、学生さんのその問いに対する答えは、自分自身と向き合うことでしか、得ることができないのです。
ソーシャルワーカーは自らの心とからだを用いて、クライエントを援助する仕事です。
専門的な地層を積み重ねていくことはもちろんですが、まずは、
①心とからだが健康であること
②自分の心とからだについて知ろうとすることを怠らず、常に自分自身の最高のパフォーマンスを提供できる心とからだの状態に持っていける術を知っていること(ここに自己覚知は関わってきます。参照:自己覚知に関する個人的見解)
③自分の言動の根拠となる価値観たちを意図的に捉えるための方法を得ていること。
の3つが自らの屋台骨として、「ソーシャルワーカーとしての自分」を支えてくれます。
そして、その上に、ソーシャルワークの価値と倫理を、知識、技術を積み重ねていくのです。
ソーシャルワークの「価値と倫理」は基盤。でも、「自分の価値観を意図的に捉える」という日々の作業が疎かでお粗末だと、せっかくのソーシャルワークの「価値と倫理」に依って立てない。「自分の価値観を意図的に捉える」という作業は自分で汗かいて得ていくしかない。
上記のように私は考えています。なので、冒頭の学生さんの問いに対して尊敬の念を抱いたのです。彼女が、学生時分にその問いに真摯に向き合い、成熟させていけば、きっとソーシャルワーカーとしての素敵なスタートを切ることができるのだろうなと思っています。
もちろん、人によって自らの内面に問う内容はそれぞれだと思います。
けれども、大切なのは、その問いにしっかりと逃げずに向き合うことをするか、しないかだと思うのです。
そして、「今は向き合うことをやめておく」という選択をすることも、とってもとっても大切です。
いまそのとき、向き合うことが苦痛すぎる問いは、心の中の仕分け箱に入れておけばいいのです
私は、「フォルダ分け」とか呼んだりするのですが、自分が時間をかけて思考したいこと、考えることが苦痛だけど、いずれ考えなければならないこと、そういったことたちを、そっと心の中の仕分け箱に入れておいて、自分の心とからだの余裕があるときに、向き合い、考える時間を作ればいいのです。
このブログを通して、学生さんからメールをいただくことが多くなりました。
自分自身大学を卒業して5年がたちますが、自分より若い人たちのまっすぐな思いや、はっとする感性にいつも学ぶことが多いです。
「年上の人間の言葉にはフィルタリングを、年下の人間の言葉にはフィルターを外そう。」
最近、はっとさせられた言葉です。
年を重ね、わかることが増えていくことで、学びの機会の扉を自分で閉ざしてしまうことがないように、心に留めておこうと常々思うここ最近です。
学生さんたちは、そろそろ現場実習ですね!
よい出会い、学び、経験となるよう願っています。
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