居場所クライシス②
アナタは独身で両親と一緒に暮らしています。「ある日、両親が脳梗塞で倒れて寝たきりになり、介護を要する状況になった。みれるのは自分しかいない。介護保険を使っても、日中ずっとは見てもらえない。施設に入れるのにも病院に入れるのにもお金がかかる。とてもじゃないけれど、生活をしながら負担はしていけない。どうするべきか。仕事を辞めて、自分が面倒をみるしかないのか。」
今も、そんな問いを迷いながら問うている人が日本にはたくさんいるのだと思う。
介護を家族だけの問題として考えるのではなく、社会全体で介護を考え、担っていきましょうという理念のもとに生まれた介護保険制度。
・核家族化による家族介護力の低下。→家族機能の外部化をせざるを得ない状況に。
・家族介護で女性の介護者が全体の85.%(1995年「国民生活基礎調査」より」
・介護者の年齢状況は約5割が60歳以上の高齢者。つまりは老々介護。
・家族介護により、女性が社会生活から離脱せざるを得ない状況が出てきていた。
上記のような時代背景をもとに、介護保険制度がスタートしたのが2000年。
・制度設計時に、介護保険制度においては想定されていたのは、家族の中で主介護者として介護に関わる女性をサポートするという、ということだった。
・男性介護者が働き、一家の食いぶちを稼ぎながら、介護を担うということはほとんど想定されていなかった。
けれども、未婚男性の増加により、今後も必然的に男性介護者が増加していく。そうした男性介護者に(これからなる)男性が冒頭の問いを抱いた時、仕事を辞めざるを得ない、仕事を変わらざるを得ないという状況が生じてきている。
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独身・未婚を、ライフスタイルの変化とかなんとか言えば聞こえがいいけれど、要は「結婚できない」社会構造、リスクヘッジとしての「結婚」を選択できないということが増えているわけで。
実際に、関わった方のケースで、未婚の息子さんが両親の介護のために仕事を辞めて、両親の年金で一家が生活している、ということや、未婚の二人息子が、末期がん、認知症で徘徊のある母親を介護するために、仕事を変え、一人が昼の仕事、もうひとりが夜の仕事をしている、という方もいた。
結婚せず(できず)、両親の介護を機に、キャリアパスの可能性を捨て、家庭内の介護に埋もれていく男性介護者。地域社会とのつながりが希薄な男性は、様々な社会資源にアクセスしづらく、閉じこもりがちになる。
少し極論かもしれないけれど、そうした男性が高齢者になったとき、孤立する独居男性高齢者が出来上がってしまう。
やれ、セカンドライフだなんやら言っているけれど、就職氷河期(ロスジェネ世代)の人たちが中年期になったとき、はたまた年金生活となったとき、今と同じ水準の生活が保障されるという根拠はどこにもない。
未婚男性→男性介護者→男性独居高齢者
この変遷の過程で、リスクヘッジとしての「居場所」を持っているかいないかで、その人の壮年期→中年期→高年期の迎え方は大きく変わってくるのだと思うのです。
つながりとか、居場所とか。
なんていうか、今の世の中を生きていく中で、漠然とした言葉にできない不安のようなものを僕を含めた若者はもっているような気がするのです。
ツイッターとか、ブログとかSNSなどに、若者がこぞってアクセスするのは、それらが、ビジネスの世界でいうところの無時間モデルを採用した最もたるツールであるということも大きな理由ではあるのだと思うのですが、孤独や、居場所の無い(リスクをヘッジできない)、情緒的に安定できないetc…というようなことから自分たちを守ろうとするという漠然とした未来への脅威に対する防御姿勢もその根底にあるような気がするのです。
「誰かと繋がっていれば」というような刹那的な何か。
その、刹那的な何かに救われ、明日も生きていこうと思えるのも人間の強さなのだと思います。
さて、珈琲でも入れて読書でもしましょうか。
【詳しくは以下が端的にわかりやすく記してあってよいかもしれません】
「孤立する男性独居高齢者」 小谷みどり氏-第一生命経済研究所主任研究員-
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