児童虐待の研修に参加して

公開日: 2010/02/27 研修

先日、東京都主催の児童虐待に関する研修会に出させてもらい勉強をしてきました。内容については児童虐待ケースの滅多にない病院に勤めているため、虐待が子どもの発達に与える影響など、知らないことが多くとても勉強になった。


研修内の「虐待をする親の心理」のテーマにおいて、講師で話をしてくれた慶応大学病院の乳児?精神科医のDrから、生後障害がわかった子どもと母親の関わりについて事例を用いての話があった。


障害を告知された母親が嘘偽りない感情としての「この子に死んでほしい」という一言が言えるまでのプロセス、それを言った後の心理にアプローチ、サポートしていくというような話の着地点だったのですが、同じ場面にもし自分がソーシャルワーカーとして対峙していたらどうしていただろうかということを考えてみると、そこに職種による視点の違いがあることに改めて気付かされた。


「この子に死んでほしい」


と母親が言った時、受容する意味で「聴く」ということならまだしも、治療的な意味を持って「聴き」、その内面に踏み込んでいけるのはソーシャルワーカーではないというのは明らかで。


自分がソーシャルワーカーとしてその言葉を口にした母親と対峙すると思うと、どんな言葉を口にしたらいいか、はたまた口にしないべきかと想像はするが、


母親に
「この子に死んでほしい」


と言わせる理由は何なのだろうか?
と考える方に思考をシフトするだろうと思う。


生後間もなく子どもに障害があると知った親の心中はひどい嵐が吹き荒れているのだと思う。その嵐を沈めたり、退避できるようなアプローチが必要なのであれば、精神科医や心理士にコンサルトするべきであって、ソーシャルワーカーが関わることが最善ではない、もしくは手に負えないと判断ができる力は(アセスメント)身につけておきたい。


自分の身の丈を知る。(自分の現在の力量を知る)
ということはどんな世界であっても、一流になるための条件であるように思う。


「自分たちの生活を自分たちの力で継続していく」


という当たり前のことが機能不全により遂行できなくなったとき、どうすれば、機能不全を起こしている阻害要因を取り除いたり、上手に対処したりすることができるだろうか、ということを対象となる人と一緒に考え、それを実現可能なものにしていくのがソーシャルワーカーなわけで。

対象となる人たちの見る現実が複雑であればあるほど、ソーシャルワーカーの中にそれをどうにかしなければという想いが生まれる。それは職業的価値としては正しい。けれども、複雑さに巻き込まれることがないよう気をつけたい。



もしかしたら誤った行動を起こしかねない母親の感情


「この子に死んでほしい」と言わせる理由が


愛する子どもが障害を持って生まれてきたのは


「私が妊娠中にお酒を飲んだから?」
「仕事をムリし続けたから?」
「体調管理がきちんとできていなかったから?」


という母親が自身を責める気持ちから発してきたものなのか。
それとも


夫が「障害がある子どもなんて育てられない」と言った。
「障害がある子がいると他のきょうだいがいじめられる」と言われた。

というような外部からの要因(夫、親族、地域社会との関係性など)からの影響を多大に受けているものであるのかということによって


母親自身と取り巻く関係性の中で、「誰に対して」「どのようにして」「誰がアプローチしていくべきか」ということの方法は変わってくる。



母親の子どもに対する「死んでほしい」という嘘偽りない感情に対して、チームで関わることは「視点の多角化・重層化」という大きな意味を持つのだと思う。


外部からの要因により、「死んでほしい」という感情に至ったのであれば、外部要因との接点に働きかけることで、その感情に変化を持ってもらうこともできるかもしれない。


人は変化していく。
気持ちも考えも、そして関係性も。
すべてが変化していく。


「生まれた子どもに障害があると知った母親」は
「障害を持つ子どもを育てる母親」に変化していく。


その変化の過程において、「生まれた子どもに障害があると知った母親」が子どもに「死んでほしい」という感情を抱くに至った外部要因に何の働きかけもしないまま「障害を持つ子どもを育てる母親」となる時間を経ていくのか、


それとも外部要因に働きかけ、母親を取り巻く関係性とともに母親が「生まれた子どもに障害があると知った母親」から「障害を持つ子どもを育てる母親」に変化していけたとしたら、母親と子どもが笑え合える時間は少しでも多くなっているに違いない。



ドラマティックな出来事は平凡な日々の積み重ねなわけであって、平凡な日々をどれだけ楽しく、楽に笑って生きていけるだろうかっていうことにもきちんと目を向けていけるソーシャルワーカーでありたい。



楽に笑って生きている平凡な日々の積み重ねが、次に出会う困難を乗り越える力になる。希望的観測だけれども、そう思い続けたい。





明日も出勤だ。頑張ろう。
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