家族をシステムとして捉える

公開日: 2011/06/25 MSW

患者さん家族の生活において大事な意思決定をする際に、その決定が非常にシビアであったり、元々の関係性が希薄な本人家族であったりした場合、



本人←→ソーシャルワーカー←→家族


上記のように「当事者である本人と家族が話し合うことがなかなか出来ず、その中間の調整パイプ役としての立ち位置にソーシャルワーカーが立たされる」


ということがあります。


本エントリでは、上記の場合における、家族をシステムとして捉えた際、調整パイプ役としてのソーシャルワーカーの役割について考えるところを記していきたいと思います。


とある問題について、クライアント、家族の構成員の間で共有ができていない(話し合いが出来ていない)とき、日常生活における不在の他者(ソーシャルワーカー)が素知らぬ顔でそのことについて問い、問題に対する考え、対処方法などを聴くということで、その語り自体がクライアントと家族の構成員の間で、問題を共有するための機会になる、ということがあります。


例えば、本人と家族同席の面接をセッティングし、そこで、本人、家族に、語ってもらい、その語りを互いに聞いてもらえるような面接の流れに持っていくのです。(頑張って…笑)


病院のソーシャルワーカーに見せる患者さん家族の顔は「不在の他者」向けの顔であることを常に心に留めておくべきだと思っています。平穏な日常生活を送っていれば、医療ソーシャルワーカーとは出会わない(出会う必要がない)ですものね。


日常生活においては関係性を持たない他者であるからこそ、(ソーシャルワーカーが)聴けること、(患者さん家族が)言えることがある。




様々な意思決定において、家族間で話し合いができておらず、足並みが揃っていないときの面接は、誰に主として語ってもらい、その語りに本人、家族各々がどんな意味付けを現在進行形でしているかを、各々の表情や言葉を拾いながら推測する。


そんな面接場面においては、語る本人、語りを聴く本人、語る家族、語りを聴く家族、司会的な役割を担うソーシャルワーカー、そんなイメージを持っています。ソーシャルワーカーが教えてほしいという問いとメッセージを発しながら、語ってもらうのです。そして、その語りを聴いてもらうのです。


これで、何かが解決するわけではありません。


ですが、語りを聴きあうことにより、本人、家族が互いに、自分たちの問題をどのように捉え、どう対処していこうと考えているかを、両者で真正面からぶつけ合うことなく、柔らかなカタチで共有してもらえることもあるのだと思っています。


患者さん家族が、自分たちだけでは「真正面から考えをぶつけ合うことができない事案、事態」である場合、それをソーシャルワーカーがきちんとアセスメントし、上記のような目的をもった面接をセッティングすることも、医療ソーシャルワーカーの業務指針における傷病や療養に伴って生じる家族関係の葛藤や家族内の暴力に対応し、その緩和を図るなど家族関係の調整を援助すること。」にあたるのだと思っています。




当ブログで、たびたび述べてきましたが、ごちゃごちゃした状態のテーブルの上(何が主たる問題かわからない状態)を、一緒に整理しながら、(ひとつひとつに優先順位をつけながら)まず何に一緒に手を付けていけばいいのか、という共通認識を持つことができれば、面接の目的は半分以上達したことになるのだ、といつも思っています。


患者さん家族にとっての、ごちゃごちゃしていて、なにから手をつけてよいかわからない状況を、ソーシャルワーカーがお手伝いすることで、とりあえずは何からはじめるべきかということを一緒に明らかにしていく。これが伴走するっていうイメージだと思っています。


わたしはいつも、なんだかよくわからなくなったら、自分の身近な物事にイメージを置き換えてみることにしています。例えば、家族をシステムで捉える、ということがなんともわからないようなら、自分の家族をイメージしてみるといいと思います。


家族の中で、誰が稼いでいるか、誰が家事をしているか、誰が精神的支柱になってるかなどなど…。家族の一人一人の顔を思い浮かべて、誰かが明日突然いなくなってしまったら、家族がどうなるだろうと想像してみると、家族の構成員が果たしている役割への理解の仕方が深まるのではと思います。


わたしは、患者さんを取り巻く環境(人も含めた)により保たれていただろうバランスをいつも考えて想像します。


家族各々の役割、各自の間の関係性が、蜘蛛の巣のように網を作っていて、家族みんなはそれをハンモックのようにして、その上で生活をしている。糸が切れれば、脆い箇所がでてくる。ハンモックの上でバランスが取れなくなる。


というようなイメージングをしています。


家族の構成員の役割と関係性をじーっと見て、推測させてもらって、役割と関係性の網をイメージして、家族はその構成員の役割と関係性でできたハンモックの上にみんなで生活しているみたいなイメージで考え、病気で役割と関係性の網がほころんだり、破けたりすると、ハンモックとしての家族力みたいなものが弱まっているのかな・・・etc


家族というシステムの上で、役割と関係性という糸により作られているハンモックが、破けたり、ほころんだりしたとき、そのハンモックを家族が修繕したり、作り直したりするのを手伝うのが、家族全体を支援の対象としたときのソーシャルワーカーのアプローチのイメージです。


なんかちょっとスパイダーマンみたいですね。(笑


というように言語でイメージ化しておくって自分の中では結構大事なわけです。




この仕事は、量で質を凌駕することは決してできない。




出会わせてもらった患者さん家族に感謝し、二度と同じケースと出会うことはないということを胸に刻んで、「患者さん家族の人生に関わらせてもらうと同時に、学べるものはすべて学ばせてもらう」という貪欲な姿勢がひとつのケースからの学びを濃縮させることになるのだと思っています。



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