日常に鈍麻することなく。
公開日: 2010/04/14 MSW
「一番に伝えたくて電話しました!」昨日、経済的問題に対し介入をした患者さんのケース。
奥さんに対し、委任払いとか、限度額適応認定証とか、傷病手当金とか、付加給付とかの説明をさせていただいた翌日、無事制度を利用できそうだ、という報告の電話をいただいた。
電話口で奥さんの笑った顔が想像できるようだった。
言葉の内容よりも、昨日よりも少し弾んだ声の調子が嬉しかった。
脳外科のケースを持ち始めてから、働き盛りの40,50代の患者さんに関わることが多くなった。(当院は2次救急ですが、地域の中規模の病院なので、圧倒的に高齢者の方が多いのです)
家族の構成員が、家族の安定を保っていく上でどのような機能を担っているか。ということをきちんと見極めることはとても大切なこと。
働き盛りのお父さん
年金暮らしのおじいちゃん
という人がいたとしても
共働き家庭における「働き盛りのお父さん」
妻は専業主婦家庭における「働き盛りのお父さん」
子どものいない高齢2人暮らし家庭の「年金暮らしのおじいちゃん」
3世代同居家庭の「年金暮らしのおじいちゃん」
家族が有している構成員の数。
各構成員がどのような役割を担い、リスクに対処しているか。
ということを考慮したうえで、
家族機能が各構成員にどのように分散されているか。
(結婚はいわば一つのリスク分散。パラサイトシングルは日本特有の現象)ということを理解することは、家族の持つ機能、力を評価するためにとても大切なことだと思う。
という前提を踏まえ考えると、働き盛りのお父さんが病気になり、家族機能の戦線から離脱するということは、その家族が安定を保つ上で大きなダメージとなるわけで。
制度が使えてよかった!という結果OKみたいな感じで終わらせるのではなく、
小さな不安をひとつずつ解消していくことの意味は
ただでさえ、対処能力の低下している患者さん家族が、次に対処しなければならない問題に向きあってもらう環境を整えることでもある。
という意味をきちんと考えて、その上での制度利用の説明なんだ、ということを位置づけて仕事をしよう。常に根拠立ててアクションすべき。
ごちゃごちゃと、どうしたらいいかわからないことばかりが目の前にあったら、なにをすればいいかわからなくなってしまうことは往々にある。
小さな、些細なことを一緒にすくい上げて、テーブルの上にあげて、
「さて、どうしましょうか」と共有し、その問題を解消すべき方法を共に考える。その繰り返しが、患者さん家族の療養環境を整えることに繋がる。そういった意味で、入院早期に経済的問題に対処するということは、とても大切なことだと思う。
「結果的に制度利用できてよかった!」で終わらせることなく、経済的問題が生じるであろう患者さんに対し、ソーシャルワーカーが早期介入し、安心して治療に専念してもらうための体制づくりを考える先導を切るくらいのことをソーシャルワーカーがやってもいいし、現にきちんとやっているところも多いはず。
まずは病棟に声かけしていくだけでもいいし。
他の職種に少しだけアンテナ張ってもらって、ソーシャルワーカーに繋げてもらう環境をつくっていく。全患者に入院時に介入することが難しい以上、すくい上げる仕組みづくりは必要だ。
現状に満足することなく、きちんと環境に働きかけることのできる仕事をしよう。そう改めて思わせてくれたご家族の一言に感謝。
日常に鈍麻することなく、日々を積み上げていきたい。
さぁ、明日も頑張ろう。