Books) 社会政策〈総論〉(有斐閣全書)著: 大河内 一男

公開日: 2015/01/27 社会政策 勝手にブックレビュー 読書記録 歴史


社会政策学史の中で著名な理論である大河内理論、隅谷理論、荒又理論、岸本理論などの中で、まずは、戦後すぐ設立された日本社会事業学校(現:日本社会事業大学)で社会政策を担当した大河内一男氏の著作を読みました。

本書のテーマではもちろんないのですが、本書の内容を踏まえて、1980年代の時代背景を踏まえ、1987年に社会福祉士国家資格認定が開始したことを考えると、いろいろなことがみえてきます。
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□「社会政策は、資本制経済の外から現れるものではなく、資本制経済の”内”から、必然性をもって生まれてきたもの」(以下本書内より抜粋) 

「多くの社会政策学者が社会改良主義のイデオロギーの上に、社会政策論を組み立てようと努力して、遂に社会政策の理論把握からいよいよ遠ざかっていったのは、その出発点に、近世の賃労働そのものに対する道義的批判が潜んでいたためであったと言えよう。」 

「人格的なるものが商品として、または”労働者”として、資本による無制限な檻用下の放置されていることに対する非難からは、社会改良主義的道義論以外のものは生まれてこないだろう。問題はまさに、生産要素である”労働力”が、その実、人格的存在である労働者によって担われており、その限りにおいて、資本の”労働力”充用については、肉体的にも社会的にも、超え難い制約が付されているという点の矛盾を解剖することの裡(うら)に、社会政策の正しい理論の出発点がある」 

「社会政策は、資本制経済に対する道義的批判を基調としていわば経済の”外”から与えられるものという理解ではなく、資本制経済そのものの存立ならびに発展を、生産要素としての労働力の順当な保全の条件として、すなわち資本制経済の再生産の条件を生産要素としての労働力のさまざまな在り方にかかわらしめて採り上げる政策として、そのための総体としての資本の意志を表現する政策として、経済の中から、その内的な必然性として理解されるのである」 

□「社会政策の主体としての「総資本」と個々の「資本」の区別」(以下本書内より抜粋) 
1「個別資本があくまで個々の資本または経営の立場であるのに対して、総資本の立場は、産業社会総体としての”労働力”の合理的把握、そのための保全又は培養を目的とする」 

2「さらに個別資本の立場が労働力に対して短期的視野のみしか持たず、摩滅し喰い潰された労働力は容赦なくこれを捨て去って、新鮮な労働力の雇用に向かうのに対し、社会的総資本は、産業社会全体が、不断に一定の労働力を確保し、長期にわたって安定した労働力の供給が保証し得るように配慮しなければならない。従って、労働力の早期の喰い潰しを防止してこれを保全し、かくして、一代から次代にわたって、長期的に労働力が中断することなく労働市場に対して”自由な”労働力として供給されることを期待する立場である」 

3「社会的総資本は、労働力の充用について、産業社会の総体としての立場、また長期にわたる労働力の再生産確保の立場を代表するものだと言ってよい。」
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□では、社会的総資本の主体は?
□社会政策の対象とは?
□社会政策の方法と概念とは?

このあたりについてもしっかり学べるので、
ご興味がある方は本書はぜひおススメです。

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妙にキレイな二元論には注意が必要だといつも思います。
白黒つけられないボーダーレスな問題や事象について考えるとき、
既存の学問の多様な考え方(考え方の枠組み)はたくさんもっていたほうが
よいのだと感じています。

歴史を学ばなければ”ならない”段階にきたと痛感します。

「成すべきこと、成さなければならないこと」を、歴史上のどの系譜に位置づけるのか?
その問いの答えは、当然、歴史に求めるしかないのですから。


社会政策〈総論〉 (1968年) (有斐閣全書) -1968大河内 一男 (著)




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