ソーシャルアクションは死んだのか?〜戦後社会福祉の歴史からSCAのミッションを考える〜

公開日: 2015/01/23 SCA ソーシャルアクション 歴史


「ソーシャルアクションは死んだのか?〜戦後社会福祉の歴史からSCAのミッションを考える〜」



私は、「社会問題解決市場」っていうのがたぶんできると思っています。
そして、そこにおけるソーシャルワーカーたちの役割は非常に重要になると考えています。

端的にお伝えすると、社会問題によって生活上の問題が生じた人たちの近くで、「声なき声」を聞いているからこそ、「社会問題の種」を見いだすことができると思っています。


日本のソーシャルワークはどんどん機能主義化しているので、組織に属しながら、問題意識をアクション化する、補完的な場をもつべきだと感じます。


社会問題解決市場にフリーランスのファンドレイザーにジョインしてもらい、事業に補助金獲得できたらその数パーセントをファンドレイザーが得るとかもできるかもしれません。


事業内容に合わせたファンドレイジングプランを打ち出せるファンドレイザーは重宝されるのではないかと思います。そしてまた、
単になる資金調達だけではなく「ファン度レイザー」として、組織のファンをどれだけ増やせるかも同時に考えられるファンドレイザーの方は、NPO等の非営利組織においては重要なポジションになっていると感じます。


柔軟性のあるプロジェクトベースでのチームの組み方は、ソーシャルワーク業界においても、例えば、退職後人材をネットワーキングして、スーパーバイザーとして若手しかしない組織に送り込むこともできるようになると思っています。というか、そういう流れをつくっていかないと、業界内の実践知という情報が流動化せず、いつまで経っても業界全体の質の向上が難しいということになりかねません。


業界のリソースを最大限に活かす方法っていろいろあると、私は思っています。


ソーシャルアクションは死んだのか?〜戦後社会福祉の歴史からSCAのミッションを考える〜 

 Transcript

  • 1. ソーシャルアクションは死んだのか? 〜戦後社会福祉の歴史からSCAのミッションを考える〜 Social Change Agency
  • 2. テーマ ソーシャルアクションに関する問い 歴史からみるソーシャルアクション 社会福祉業界に今後求められること
  • 3. 問い) ベルトコンベア・ソーシャルワーク? 目の前にいるクライエントが有する困りごとは、 どのようにして生み出されたのか? 時間を遡り想像してみると…???
  • 4. 問い)クライエントを見て、社会も見る? ソーシャルアクションに関心が生まれた。だが、大学ではその手法や過程等を教 育されてはこなかった?それはなぜだろうか?ソーシャルワーカーは、クライエントの背後にクライエントが 抱える困りごとを生み出している社会の問題を見ている。 なのになぜ、アクションを起こすことができないのか? クライエント 社会
  • 5. 問い)自分がいる現場は バッティングセンターなのか?? 特定の場に身を置き、そこに放り投げられる球を来る日も来る日も 打ち返し続けるブルーカラー労働者。それで本当にクライエントの 利を追求し、今よりよい社会をつくれるのだろうのか?
  • 6. 問題意識の基となった3つの視点 【予防的視点】 ベルトコンベアの上流を辿る想像力無くしては、実践から得た知 は、いつまで経っても社会に還元されないのでないか? 【システム論的視点】 ミクロとマクロを行き来する視点が無ければ、クライエントの困り ごとを社会のシステムの中に位置づけることができないのではな いか?だが、関連領域の知見が不足している(個人にも業界に も) 【ソーシャルアクション視点】 「社会を支え、社会を変える」は、両輪であるべきだが、なぜそれ が出来ないのか?
  • 7. ソーシャルアクションとは? 「広義の福祉を含む社会福祉の制度・サービスの創設・ 改善・維持をめざして国や地方自治体、つまり議会や行 政機関に立法的・行政的措置を執らせようとする組織的 な対策行動及び企業や民間団体に対して行われる社会 的行動」 社会福祉学レキシコン第二版より
  • 8. ソーシャルアクションのモデル 【合意モデル】 ソーシャルアクションの活動を鼓舞するイネイブラーと しての役割 【闘争・葛藤モデル】 代弁者と組織運動家としてソーシャルアクションの展 開に主体的に関わる。 佐藤豊道「ジェネラリスト・ソーシャルワーク研究」P229〜230 その他、「市民運動型」、「代理型」、「当事者主体型」 などの分類がされる。
  • 9. ソーシャルアクションの展開過程 福祉的問 題の発生 • 始動集団の編成 主導集団 の形成 • 要求の 明確化 主導集団 の熟成 • 行動計 画の立 案 支持層の 拡大 • 直接行 動の展 開 具体的な 行動 • 成果の 総括 運 動 終 結 新たな課題の提起 出典:谷口明広「社会活動法(ソーシャルアクション)」新社会福祉方法原論―21世紀福祉メソッドの展開 硯川 真旬 (著) P183
  • 10. Social Change Agencyとは? (2013.8設立。現在NPO法人申請中) 「社会の支え手を増やす」 「社会の支え手を支える」 「社会の支え手から、社会を変える人たちを輩出する」 Social Workerとして社会を支え Social Change Agentとして社会を変えよう “実践家と学者と社会起業家が集う基地” VISION MISSION CONSEPT
  • 11. 社会福祉従事者が置かれている現状 • 職業に対する社会的認知度・評価が低いと感じている1) • 専門職としての体系的なキャリアラダーが未整備/支援者支援 の脆弱さ2) • 社会福祉業界全体を牽引する団体の不在3) 1)厚生労働省HP 「介護福祉士等現況把握調査の結果について(2008) 2)茨城尚子「社会福祉における支援者支援」『社会福祉研究119号』鉄道弘済会2014年P2-9 3)Social Change Agency HP「日本社会福祉士会の加入率からみる社会福祉業界の”福祉政策を 決定する政策過程に介入する力”の脆弱さについて」(2014)
  • 12. 日本社会福祉士会の組織率変遷 10年で、10%低下。社会福祉士有資格者の5人に1人の加入率。 業界全体として、政策を決定する国に 影響力を及ぼすことのできない状況。
  • 13. だがしかし、有資格者は増えている。 13 社会福祉士 (約17万人) <日本における国家資格> 精神保健福祉士 (約7万人) 介護福祉士 (約120万人)
  • 14. ソーシャルアクションは死んだのか?
  • 15. 歴史から見る日本の社会福祉専門職養成 1925:第一回社会事業講習会開催 1945:終戦 1946:旧生活保護法施行/日本社会事業学校開設 1947:日本国憲法施行 1948:大阪社会事業学校設置 1950:生活保護法制定 福祉六法、国民健康保険法制定 1987:社会福祉士及び介護福祉士法制定 1991:福祉関係八法改正 2000:介護保険法施行 2006:障害者自立支援法施行 2013:障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法 律』(通称・障害者総合支援法)施行
  • 16. 日本国憲法からみる社会福祉 すべて国民は、健康で文化的な 最低限度の生活を営む権利を有する。 国は、すべての生活部面について、 社会福祉、社会保障及び公衆衛生 の向上及び増進に努めなければならない。 憲法第25条
  • 17. 生存権からみた社会福祉 生存権の保障 (憲法25条) 社会福祉 社会福祉 六法等 社会保障 社会保険 法等 医療 医療法等 公衆衛生 保健所法 等

  • 18. 社会福祉政策はどのように実行されるか? 社会福祉の循環構造モデル 吉永清 今岡健一郎 星野貞一郎(1976)「社会福祉概説」有斐閣双書より抜粋政策主体 福 祉 問 題 政 策 決 定 過 程 政 策 執 行 過 程 ( 行 政 ) 援 助 活 動 主 体 対 象 者 民 間 福 祉 活 動 ( 主 に ボ ラ ン テ ィ ア 活 動 ) 運 動 主 体 選 挙 福 祉 運 動 In 福 祉 政 策 福 祉 予 算 化 さ れ た 施 策 福 祉 サ ー ビ ス 福 祉 サ ー ビ ス の 効 果 福祉サービスの漏れ、ずれ フィードバック 福祉サービスの漏れ、ずれ out in out in out in out in out in out in out in 福祉サービスの漏れ、 ずれの認識 in outin あるべき施策 の追求 out in 福祉要求

  • 19. 仮説)ソーシャルアクション機能が 弱体化した要因 戦後、GHQの主導のもと、社会事業教育におい て、社会政策や社会運動等がカリキュラムから 除外された 学生運動、社会運動等の影響 1980年代以降の社会保障費の増大 参考)「社会事業大学50年史」、「証言:日本の社会福祉」、「社会福祉概説」他
  • 20. 仮説)戦後社会福祉業界の“失敗” アドボカシー機能、ソーシャルアクション機能という牙を 抜かれ、草食化した。それが、戦後長期的な日本の社 会福祉を損ねたのではないか? • 福祉政策の末端にいるにも関わらず、政策主体にフィード バックする機能を欠落させた「物言わぬ労働者」つまりは、 単なるブルーカラーとして消費される労働力と化した。 • ソーシャルアクションは養成過程においても軽視され、社 会福祉士国家資格化により、ソーシャルアクションに関連 する他学問はより軽視されるようになった。 • 沈黙と化したソーシャルアクション機能は、職業の社会的 意義の自己喪失と、社会からの評価・期待・信頼を得損ね た。
  • 21. ソーシャルアクション機能が 弱体化することで起こること • 社会福祉の立場から社会問題について言及し、そ れを世間一般に広く発信していくことが難しくなる。 • 社会福祉従事者の活躍の場を獲得していくことが難 しくなる。 • 国の政策決定過程に介入ができないため、社会保 障の拡充等に関与できなくなる。 国、一市民、社会福祉従事者たちにとって 不利益を生むのではないか?
  • 22. 2025年以降の日本を待ち受ける未来 • 5人に1人が後期高齢者
  • 23. 2025年以降の日本を待ち受ける未来 2030年までに約40万人死亡者数が増加すると見込ま れるが、看取り先の確保が困難
  • 24. 業界全体としての ソーシャルアクション機能の弱さ 厚生労働省 第6回 福祉人材確保対策検討会 構成員提出資料1 上野谷構成員 平成26年10月3日
  • 25. 社会福祉業界に今後求められること 世界初の課題を数多経験する日本 課題先進国として、それらをどのように解決するかと いうことに価値を置くことで国際社会における存在感 を示していくことができるのではないか? 社会福祉従事者は、 そのキープレイヤーに成り得る。
  • 26. 今後の社会福祉業界に 必要な3つのキーワード • 疫学・予防社会福祉 • 分業・協働型ソーシャルアクション • 社会への発信力(メディア力)の強化 バッティングセンター型社会福祉から抜け出し、 社会福祉システムをアップデートするために
  • 27. 提言)疫学・予防社会福祉 【社会疫学・疫学社会福祉】 社会問題や個々人の生活問題を予防的に介入する。 「予防的視点」、「システム論的視点」、「ソーシャルアクションの視点」に 基づく、「疫学社会福祉システム」の構築。 例:社会福祉システムへのアクセシビリティの向上。 【SROI(Social Return on Investment:社会的投資収益率)】 社会・環境・経済面の費用と便益とを以て様々な活動による社会的イン パクトを評価し、その社会的価値を適切に評価すること(釧路市生活保 護課で活用開始) 上記、社会疫学・疫学社会福祉に、社会に対する「説得力」という根拠を もたらすためのツールの一案。 【社会福祉従事者への教育の充実・範囲の拡充】 上記に必要な医学(疫学)、政治学、経済学、社会学、法学等を体系的に 学ぶことのできる場の創出を。
  • 28. 提言)分業・協働型ソーシャルアクション 【分業・協働】 ソーシャルアクションのプロセスを分業・協働し実行する。 ・社会福祉従事者は「問題の発見」のセクターを担う。 ・発見された問題を分析するセクター(大学、シンクタンク等) ・ソーシャルアクション専門セクター(起業家やロビイスト等) 【手法を学ぶ、創る】 多様なソーシャルアクションの手法を学び、新たに創出 する(当事者運動や社会運動から学ぶ。テクノロジーや 他領域の手法や技術を活用する)
  • 29. 提言)社会への発信(メディア力)の強化
  • 30. 3つのキーワードに加えて まずなによりも、 社会福祉業界自体が連帯することが第一。 業界全体として規模の大きい、かつ 政策への影響力をもったアクションは起こせない。 「社会の支え手を増やす」 「社会の支え手を支える」 「社会の支え手から、社会を変える人たちを輩出する」



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