(Books)「環状島」&「ソーシャルワークの社会的構築」

公開日: 2014/03/24 MSW 勝手にブックレビュー 読書記録

先輩からおすすめいただいて読んでいる一冊。
トラウマについて語る声を「環状島」という概念を採用して論じています。






被害者は環状島の<内海>に沈む、と著者は言います。

「発言権や証言者としての正統性は、たしかに中心に近づくにつれて高まるかもしれない。けれども、実際には被害が大きすぎた人は死んでしまって、発言をする機会をもたない。また生き延びたとしても、発言するためにはある種の条件、能力や資源が必要となる。知的能力、コミュニケーション能力、論理性などは不可欠だろうし、聞き取る者と同じ言語で話す能力、識字能力も求められるかもしれない。説得力を持たせるには、演出力や社会的信用も必要になるかもしれない」


犯罪被害のトラウマと法的救済については…

「根本的な問題は、被害内容が重く、それによってもたらされた症状が重い人ほど、逆に法的救済がされにくくなる、ということである。環状島の現象がここに明確な形をとってあらわれる。法のシステムに届くほどの声を発することができず、<内海>に沈む被害者たちが多くいるのである」

と述べています。


著作内には、著者の思考実験としての「環状島」が図式化されているのですが、これが非常に概念として、私でも一発で腑に落ちるほどの汎化度の高いもので、その汎化度の高さが、本書を一気に読み進めさせる駆動装置になっているように思いました。ぜひ、ご一読をおすすめします。(しかし、読む人を選ぶようにも思います。自身の未消化な当事者性のようなものが、炙り出されるようなことになるかもしれませんので、そのあたりは注意をお願いします)


先日、他の先輩におすすめいただいた「ソーシャルワークの社会的構築 (明石ライブラリー)」に加え、今月は素晴らしい読書体験をさせてもらい、感謝です。
(ソーシャルワークの構成する、諸々の前提条件への批判的論考を押進めている一冊です。激お薦めです)





やはり、この人はすごい!という方からお薦め頂く本は、黙って購入して読んでみるべきだと改めて思った3月でした。


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