(Books要約)ケースワークの原則 第2部 援助関係を形成する諸原則 原則5 クライエントを一方的に非難しない(非審判的態度)

公開日: 2013/11/08 MSW ソーシャルワーカーが自己覚知をすすめる上で読んでおきたい書籍 勝手にブックレビュー 読書記録


某勉強会で用意した、バイスティック著:『ケースワークの原則 第2部 援助関係を形成する諸原則 原則5 クライエントを一方的に非難しない(非審判的態度)』の要約をこちらにも載せます。




【要約】

・宗教的背景:キリスト教の「困難をかかえる人を治療ないし援助するとき、その人を裁いたり、非難したりしない」という考え方

・CLを一方的に非難しない態度を採用することの両面性
CLを非難しないという態度は、多面的に人や物事を判断する努力と両立する。

・CLを一方的に非難しないということの”定義”
”ケースワークにおける援助関係を形成する上で必要な一つの態度”
CLの罪の有無、問題やニーズに対するCLの責任を判断すべきではなく、CLの態度や行動、判断基準を多面的に評価する必要があり、ワーカーの一方的に非難しない態度には、ワーカーが内面で考えたり、感じたりすることが反映され、CLに自然に伝わる。



クライエントのニード(P144〜)

・ワーカーが出会うCLが有している恐れ
 ・人が社会福祉機関を訪ねることは、自分の生活のある部分に対して、自力で対処す
  ることができなくなっている事態におかれていることを意味している。
 ・多くの場合、CLは、非難されるのではないかという恐れを有している。
 ・その背景には、CLを理解する努力もせずに、しかも非難する資格のない人から、
  失敗を裁かれたり非難されたりした苦い経験がある。


・ワーカーの非難しない態度がCLに伝わることで起こる変化
自己を防衛する必要性を感じなくなり、自己を多面的に見つめる強さ、
前向きに変化するために必要なことを実行できる強さを身につける。



価値と基準は必要である(P147〜)

・ケースワーカーがCLの行動を評価する動機や目的
CLがより良く生きられるよう援助する一環として、彼らの現実を理解することが目的であり、そのためにCLの行動に関心を寄せる。

・CLが採用している価値や判断の基準
これらはCLの現実を構成する一部である。だからこそ、ワーカーはCLが採用している価値や判断の基準を評価する努力と、CLを非難しない態度とを両立させることができる。



・CLの有する価値や判断の基準を多面的に評価する態度が、援助に欠かせない3つの理由

1. ケースワーカーはソーシャルワーカーとして社会的な責任を負っているという理由

2. 社会に背いたり、法律を無視したり、道徳に反したりするCLの態度自体が、問題の中核である場面が少なくないという理由

3. ケースワーカーはいろいろな基準をもったCLに対応する際に、自分のもっている価値基準と対立するようなCLの基準に従おうとするあまり、ワーカー自身のパーソナリティの統合を危うくする必要はないという理由



・自己決定を制限すべき場合

CLが、自分勝手な解釈により、反社会的な行動や不法な行為を犯してしまう場合、ケースワークにふさわしいやり方で、CLの自己決定を制限すべき。

問)「容認できない」というワーカーの判断をCLに伝える必要があるか?
→CLのパーソナリティの強さによって異なる。診断と援助関係が適切なかたちで形成されていれば、CLの逸脱行動を指摘したり、行動の意味を解釈したりする援助はしばしば必要。

「自己決定を制限すべき場合はどのようなときか」という問いについて考える際、価値や判断の基準の一般的な本質をしっかり理解しておく必要がある。

これらを理解するための「ものさし」は、一方の端に本質的な価値(法律や道徳を守るなどの重要な価値)が置かれ,逆の端には比較的重要でない価値(家事の進め方などに関するあまり重要ではない価値)が配置されているような尺度。



批判しない態度と情緒的要素(P152〜)

CLを一方的に非難しないという態度は、CLを裁くことが人間の基本的な人権を侵害し、援助を損なう恐れをもっているという、ケースワーカーの内面にある確信から生まれる。これを援助過程のなかで生かすには、物事を深く考える力と、豊かな感受性をもつ必要がある。

理由:CLは、思考と感情の二つのレベルで非難されるのではないかと恐れている。それ故、思考レベルだけで対応するのは不十分。「援助者は自分の感情を自覚して吟味するという原則」が役に立つ。

ケースワーカーの非難しない態度は、知的レベルと、感情レベルに組み込んでこそ、CLは初めてワーカーのその態度を自らの感情のレベルで受信できる。



問)「どのようにすれば、ケースワーカーは非難しない態度を自分の感情のなかに組み込むことができるだろうか」という問いのこたえをみつけるために役立つ二つの種類の理解


1. ケースワーカー自身の自己理解
(ケースワーカー自身も研究対象である。)

2. 非難されることに対するCLの感情への理解
(感情は言葉で表現されるとは限らない。言葉によらない感情表現を観察し、その意味を理解してこそ、CLの感情に沿って援助を進めていくことができる。)



非難しない態度を伝えるということ(P155〜)

ワーカーの非難しない態度は、援助過程を形成する全ての過程を通し、深まっていくもの。


問)非難しない態度を維持するには?

・ワーカーの中にある偏見や先入観を知る。

自分の中にある偏見を自覚し、それをコントロールし、ありのままに客観的に見なければならない。あるいは、CLを偏見という色眼鏡を通してみるのではなく、彼らを主観的でなく多面的かつありのままの姿で捉えなければならない。

・「わかったふり」をやめ、個別化し、転移等の防衛反応に気づき、その意味を理解しようとする。

CLが表出する否定的感情を、CLを理解する手がかりだと気づくことができることで、攻撃的なCLに対しても、非難しない態度を維持し、その態度を伝えることができるようになる。



【提起したいテーマ】
・日常で自分が「非難された」と感じた経験はあるか?あれば、「なぜ、そのように感じたか?」

・CLを非難しないという態度と両立される、「多面的に人や物事を判断する努力」とは具体的にはどのようなものか?

・ケースワーカー自身の自己理解(ケースワーカー自身も研究対象である。)をするために、どのような方法が考えられるか?

・非難しない態度を維持するために、明日からできることはなにか?







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