大阪市立大学医学部附属病院がん相談支援センター/医療ソーシャルワーカー:大松尚子氏のコメント記事(News)

公開日: 2012/05/24


医学書院HPにて研修医Dr向けの記事
他職種より愛を込めて院内を駆け回るための18の"Tips"」(元記事)にて大阪市立大学医学部附属病院がん相談支援センター/医療ソーシャルワーカーの大松尚子氏のコメント記事がありましたので、以下医学書院HPより転載。


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大松尚子(大阪市立大学医学部附属病院がん相談支援センター/医療ソーシャルワーカー)

がんの治療選択が患者さん本人の意思に委ねられるようになり,IC(インフォームド・コンセント)に研修医の先生方がかかわる機会は多いと思われます。治療を選ぶ立場におかれた患者さんをサポートする際の,3つのTipsです。

Tips 1 患者さんには家族がいることを忘れずに!

 がんの治療を選択するとき,どの患者さんもまず家族のことを思うのではないでしょうか。家族がいるからいま自分は死ぬわけにいかない,家族のためなら厳しい治療でも受ける覚悟がある。「副作用や後遺症,また経済的に家族に負担をかけたくない」という気持ちと,「家族のためにもしっかりと治療を受けなければ」という気持ちとの間で,葛藤する場合もあるでしょう。本人に確固たる思いがあっても,家族の意向が治療選択に強く反映することもあります。
 一方,治療選択について一緒に考えてくれると期待していた家族から「あなたが一番いいと思う治療を選んで,応援するから」と言われ,突き放されたように感じる人もいます。

Tips 2 患者さんには生活(仕事や役割)があることにも配慮して!

 サラリーマンの場合は有給休暇や傷病手当金等の休業保障がありますが,自営業者や派遣社員等は休んだ日数分の収入が減るという現実があります。また,育児や介護をしている人は自分の病気よりも,治療の間,代理を誰に頼むか悩みます。手術の後遺症について自分なりに調べ,これまでの生活が難しくなるからと治療に踏み切れない人もいます。
 一日も早く病気を発見し,短期間で治療を終えたい,仕事に穴をあけたくないと誰もが考えています。長期にわたって休まざるを得ないとわかったら,元の仕事に戻れるか不安になります。仕事や経済的なことが治療選択に影響を及ぼすことも起こり得ます。
 「担当医に自分の仕事の話をしても仕方ない」「命を救ってもらうのだから,担当医にそれ以上は相談できない」という話を患者さんからうかがうことは珍しくありません。

Tips 3 患者さんの揺れる気持ちを受け止めて!

 担当医から治療に関し十分な説明を受け,いったんは納得した後も,家族がインターネット等で「副作用がない」治療を見つけたり,知人から「がんが消えた」情報を得たりすると,患者さんは(自分は情報から取り残されているのではないかと)焦り,気持ちが揺れることがあります。
 治療を開始したものの副作用のつらさから厳しい治療を継続していくことに自信を失い,もうやめてしまおうかと思うときもあるでしょう。また,一度は断念した治療を,体の調子が良くなってきた今なら再開できるのではないかと感じる人もいます。患者さんの気持ちはさまざまな要因で揺れ,同じところを行ったり来たりします。

◆ひと言メッセージ

 患者さんやご家族にとって,若い研修医は声を掛けやすい,いろんなことを聞きやすい存在ではないでしょうか。その立場を活かしてアンテナを全開にしてください。

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