「贈与と返礼」から考えるモチベーションの居所について

公開日: 2012/07/30 MSW 思索 勝手にブックレビュー

内田 樹 氏の「ひとりでは生きられないのも芸のうち (文春文庫)」読了。
読んでいて考えることが多かったので共有させていただきます。


『自分に与えられた場所で、自分の割り当て分よりも少し多めに働く。システムの瑕疵がカバーされ、「いいこと」が少しだけ積み増しされそうなことがあれば黙ってやる。そのオーバーアチーブ分は給与には反映しない。「持ち出し」です。それが仕事を通じての「贈り物」です』P284 

『すべての人がそれぞれの現場で、ちょっとずつオーバーアチーブする。それによって、社会システム全体の質が少しだけ向上して、僕たちは生活の全局面で、そのささやかな成果を享受することができる。そういう意味では、僕たちは既に贈与と返礼のサイクルのうちに巻き込まれているのです。』P284




上記「贈与と返礼のサイクル」についての一節は、自分自身が仕事を続けているモチベーションを考える上での補助線になるな、と読んでいて思ったのです。私は過去に自身のモチベーションについて以下のように記しています。


自らの援助者としての質は他者によってはかられるものですが、常に対象となる人の前に立つ自分が「昨日よりも進歩している自分」であるようにと強く思っています。 

日々、反省と挑戦を繰り返し、進歩を自己評価する中で生まれるのが、個から得られた普遍的な実践知であり、それは言語化されて初めて自分の持ち物になるのだと思うのです。 

個別のケースから普遍的な実践知の考え方の枠組みなどを創造し、自分の職業的価値観としての屋台骨とし積み重ねることが、言語化の大きな目的となります。その副産物として他者に伝えられる、継承可能な実践知が生まれる。そして、それを出来る限り多くの人と共有したいと思うのです。 

私自身が「誰かと自分の知見をシェアしたい」と思うのは、私自身が、今までの人生において多くの人たちに「そこは自分の範疇外だから」と言えば見て見ぬ振りをできただろうことを「自分の範疇に引き入れて」手助けをしてもらったからこそ、今ここに存在できている、ということを実感しているからです。
だからこそ、自分も、日々自分が得たものを誰かのために還元し、誰かに貢献したいと思うのです 

誰のためになるかわからない論文を一本書くのなら、誰かを鼓舞できる文章を10本書きたい。今は正直そういう気持ちが大きいのです。日々自分の身体が感じるノイズを言語化することでクリアにし、目に見えるカタチで実践知を積み上げていきたい、という思いが自分のモチベーションを駆動させています。


上記、過去エントリ:モチベーション3.0より抜粋




上記を、内田樹氏の文脈に照らし合わせ考えると、私が今までの人生で出会った人たちの「オーバーアチーブ」により、今の自分が在るという「贈与を受けた」感が、20数年生きてきてやっと、贈与と返礼のサイクルの中で、自分の「シゴト」を見つめることができるようになってきたのかな、と思うのです。




自分が社会に何かを還元したいというモチベーションが、「贈与を受けた」感を凌駕することがないのは、おそらく、私が「贈与」だと感じた人々の思いや行動自体が、私個人「のみ」に向けられたものではなく、私が「私に向けられた」と感じとった時点に成立した「贈与」なのだからだと思うのです。




「私に向けられた」と感じとった時点に成立した「贈与」を「返礼」しようと思ったとき、「贈与に見合う返礼」というは、相手からの「贈与」が私個人「のみ」に向けられたものでない以上、相手に同等のものを「返礼する」ことだけでは、どうしても不釣り合い感だけが残ってしまうような気がするのです。




ですが、この「不釣り合い感」、つまりは「私の方だけが、たいそうな贈り物を頂いてしまって、頂いた相手方にお返しするだけでは返しても返しきれない…で、あるならば。」という論理が、内田樹氏の言う「オーバーアチーブ(期待を上回る)」を生むのではないかと思うのです。




つまりは、「今まで、色々な方々に手を差し伸べてもらい、社会からドロップアウトせずに済んだ」という、私が感じている贈与の「不釣り合い感」が、私個人の「オーバーアチーブ(期待を上回る)」を生み出す源泉と成り得る。ということを内田氏の文脈を補助線として再構築できる、と思ったわけです。


ということで、ほとんど自分語りになってしまいましたが、以下をご紹介させていただきます。








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