アウトリーチにおける協働の構造について考える
全国こども福祉センター主催アウトリーチ研修において、「協働」についてお話をさせていただきました。研修内容の一部を転載します。
1.協働とはなにか?
1.協働とはなにか?
協働とは、複数の主体が、何らかの目標を共有し、ともに力を合わせて活動すること
→自分・自組織だけではできないことを、他者・組織の力を借りて行うことができる.
2.協働に必要なこと
「3人1チームで、協働してください!」と言われたら、どうしますか?
協働に必要な3つのこと
⑴
|
⑵
|
⑶
|
3.アウトリーチとは
⑴福祉現場での支援の実際
「相談窓口に来ることができる人」にしか、支援を届けることができないという限界
⑵支援が届かない人はどんな人か?
・相談窓口に来ることができる人よりも支援が必要である場合が多い
・支援者(他者)とつながることに対し、心理的・物理的・能力的なハードルが存在する
⑶アウトリーチはプロセス
・アウトリーチは単なる「訪問」、「出向くこと」ではない
・支援が届かない人を「発見」し支援するために、必要な社会資源やサービスにつなぐための入り口をつくる、そのためのプロセス
・何がクライアントが「つながる」ことを妨げているのか?(物理的、精神的、能力的)を理解することもアウトリーチの設計を考えるうえで重要なこと
4.アウトリーチ/ソーシャルアクションにおいてなぜ「協働」が必要なのか?
①協働することの最大のメリット
他者・他団体と共に力を合わせて活動することで、
自分たちの組織・サービスだけでは実現が困難なことを為すことができる
②協働の目的と方法
協働の目的
|
方法
|
パートナー
|
⑴まだ出会えていないサービスの対象者とつながる/情報や支援を届けるため
|
?
| |
⑵対象者への支援をより手厚く、
質の高いものにするため
|
?
| |
⑶新しい社会資源を生み出すため
|
?
|
⑴まだ出会えていないサービスの対象者とつながる/情報や支援を届けるため
・協働している個人・組織が増えれば増えるほど、その個人・組織が「つながっている人」に情報・サービスを届けることが可能になる
→自分たちのサービスを必要としている対象者に情報を届けやすくなる、出会いやすくなる
例)子どもたちの溜まり場となっているお店の店主にお願いして、お店に自組織開催のイベントのポスターを貼ってもらう
⑵対象者への支援をより手厚く、質の高いものにするため
自分・自組織の資源だけでは対応できない課題を有する対象者に対し、その課題に対してアプローチできる知識や技術がある人・組織と協働することで、対象者への支援をより手厚く、質の高いものにすることができる
例)
・NPOがサポートしているDVにより住民票をうつさず居場所を転々としている母子に対し、女性相談の窓口担当者を紹介する
⑶新しい社会資源を生み出すため
自分・自組織の資源だけでは生み出すことができない新たな社会資源を創出する
例)
・地域の古民家を借りて、24時間過ごせる居場所をつくるために、子ども支援をおこなっている複数のNPOが協働する
・病気の診断にAIを活用したシステムを創るために、医療機関とテクノロジー企業が協働する
5.アウトリーチを目的とした協働
協働の目的
|
方法
|
パートナー
|
まだ出会えていないサービスの対象者とつながるため
|
アウトリーチ
|
?
|
①アウトリーチを目的とした協働のための3つの準備
⑴対象者を知る
|
自分たちのサービスを届けたい人はどのような人か?
|
⑵協働のパートナーを知る・探す
|
⑴を踏まえて、届けたい人に出会うためにはどのようなパートナーとの協働が考えられるか?
|
⑶自分・自組織を知る
|
⑵のパートナーに協働を持ちかける上で、以下をしっかりと伝えることができるか?
・自分/自組織のサービス内容
・なぜ、協働してほしいと考えているか
・自分/自組織と協働することで相手にどのような利点があるか
|
⑴対象者を知る/⑵協働のパートナーを候補を知る・探す
あなたが、出会いたい対象者はどんな人か
|
出会うため、情報を伝えるためのパートナーになり得る人・組織・ツールは?
| |
対象者を知るための
ヒントとなる質問
|
各質問への答え
| |
年代、性別、住んでいる地域
| ||
家族構成、居住環境
| ||
出会うであろう(近くにいるであろう)人
| ||
信頼している人
| ||
使う/買うであろうもの
| ||
行くであろう場所
| ||
生活上、必ず行かなければならない場所
| ||
情報を取得する場所・媒体
| ||
衣食住の充足方法
| ||
生活に必要なお金を得る方法
| ||
よく使うコミュニケーションツール
|
⑶自分・自組織を知る
パートナーと協働するためには、パートナー候補に対して、「自分たちはなにものか」について伝えることができる必要がある。
自分・自組織を知るヒントとなる質問
自分・自組織の提供しているサービスは何か?
| |
サービスの対象者は誰か?
| |
アウトリーチする上で、自分たちに足りない資源は何か?
(なぜ、自分たちのサービスを対象者に届けることが難しいのか?)
| |
どのような他者・組織と協働する必要があるのか?
| |
自分・自組織の強みは何か?
| |
協働パートナー候補(他者・組織)にとって、自分・自組織と協働することのメリットは?
|
6.協働のための「発信」
自分・自組織の存在を、協働のパートナー候補に知ってもらうことができれば、協働のお願いはしやすくなり、協働のパートナーとして声をかけてもらえる可能性も高まる。
必要時に他者・他団体と協働する上で、常日頃からの発信も重要となる。
①どのような内容を発信するか
⑴自分・自組織について
・課題意識(自分たちは〜が社会における取り組むべき課題だと思っている)
・提供サービス内容(その課題に対して、〜というやり方で取り組んでいる)
・他者・他機関に提供できるもの/メリット(それゆえ、〜ということを提供できる)
・サポートを得たいこと(〜が不足しているor弱いため、サポートを欲している)
②どのような方法で発信するか
⑴インターネット(ホームページ、SNSなど)
⑵チラシ・パンフレット
⑶イベント等のリアルな場の開催
⑷ハブとなるキーパーソンを通して
7.アウトリーチのための協働〜既存の実践例〜
⑴ホームレス支援:図書館、ファストフード店、ネットカフェ
⑵独居老人:商店街、ポイントカード、行政やNPO
出典)http://prw.kyodonews.jp/opn/release/201502177747/
⑶孤立高齢者:万引き、量販店、警察、行政やNPO
⑷検診弱者:ギャンブル、パチンコ店、ミニスカート
8.協働のための「連携アプローチ」
協働の依頼は言い換えれば「お願い」である。
組織同士の協働も、まずは1対1の個人の関係性作りからスタートする。
他職種・他機関に協働のお願いをする「連携アプローチ」もまた、協働をなす上でとても大切.
他機関・他職種に対し、期待する役割の分類
連携アプローチの分類
連携アプローチとは?
協働をするための連携アプローチは、論理と感情の2側面から考える
9.まとめ
①協働には目的があり、目的に合わせた方法とパートナーの選定が行われる。
②アウトリーチを目的とした協働には3つの準備が必要
③協働パートナーに「協働のお願い」をする「連携アプローチ」も重要
協働の目的と方法とパートナー(何のために、どのように、誰と協働するのか?)
協働の目的
|
方法
|
パートナー
|
⑴まだ出会えていないサービスの対象者とつながる/情報や支援を届けるため
|
アウトリーチ
|
?
|
⑵対象者への支援をより手厚く、
質の高いものにするため
|
リファー、
コンサルテーション
|
?
|
⑶新しい社会資源を生み出すため
|
ソーシャルアクション
|
?
|
アウトリーチを目的とした協働のための3つの準備
⑴対象者を知る
|
自分たちのサービスを届けたい人はどのような人か?
|
⑵協働のパートナーを知る・探す
|
⑴を踏まえて、届けたい人に出会うためにはどのようなパートナーとの協働が考えられるか?
|
⑶自分・自組織を知る
|
⑵のパートナーに協働を持ちかける上で、以下をしっかりと伝えることができるか?
・自分/自組織のサービス内容
・【理由】なぜ、協働してほしいと考えているか
・自分/自組織と協働することで相手にどのような利点があるか
|
協働のための「連携アプローチ」