『「教える、教えを請う」というシステムが生み出すもの』

公開日: 2015/05/03 CSW CW MSW スーパービジョン 教育

先日学生と入職3年目までの方を対象にしたイベントを開催しました。


学生は、現場1年目の人間の話を「この人から学ぶことがある」と聞く。現場1年目は2年目、3年目の話を「この人から盗めるものがあるだろう」と聞く。これは、「教える・伝える」側に一度でも立ったことがあれば、体感的にわかる。それは、「教える」、「教えを請う」という場(装置)が、そうさせるものだからです。


「この学びはいくらです」というパッケージ・商業化された学びと異なり、「今、自分が現場で生き抜いていくために必要な学び」を得ようとおもうとき、「この学びはいくらだ」という価値判断は本体登場しない。「生き抜くために必要な学び」を自分の目と耳で定め、掻き分けながら、探す。


だから、教えを請う側は、真剣になるし、その真剣さにうたれ、教える側も「今、自分が伝えられると想定されること以上のもの」、つまりは、「昨日までの自分では言葉にできなかったことを言葉にできる」ということを経験する。「教える・教えを請う」という装置は、両者にとってものすごい価値を生む。私は現場に出てからずっとそう感じてきました。


自分の経験を振り返ると、学生の頃、気遣っていただいたソーシャルワーカーの方々は、当時現場7年目の方々でした。学生の問いに対し、真摯に言葉を紡ぎながらこたえてくれた記憶は、今でもはっきりと思い出せる。予定調和ではない業界の先輩による「面前で紡がれる言葉たち」から、何かを学ばねばと必死にさせられたことを思い出します。


たとえ同じ事実に関する話だとしても、1回目と2回目では、「伝えられること」は必ず変化します。時間と経験が加わり、既存の「伝えることのできるコンテンツ」は、更新される。いや、その人間が学び続ける限りは更新され続けるからです。


この構造を何処かにもっていないと「過去の経験」は閉じられた自分だけの所有物と化し、新しい知見は得られず、他者との共有も難しくなります。つまりは、成長の伸び白が少なくなるからです。


既存の学会等には、「教える・教えを請う」機能は存在しないゆえ、既存のスーパーバイズの機能と場を現任者は活用すべきだと考えます。それに加え、私は、若手のソーシャルワーカーたちが「教える」側に立つことで、得られる価値に気づいてほしいと思うのです。それは早ければ早いほどいいと考えます。


「教えるとは、教えられる」という経験を得た得たソーシャルワーカーたちが、増えていけば、今後彼ら彼女らが、所属組織における「ポスト」につかれたときに、活きてくると考えているし、そうなった時期に、この業界はもっとおもしろくなると私は信じて疑いません。



自分が育ててもらった業界に対して、今の自分の手持ちの資源で、どういった還元ができるかということを考えることは、業界に長く身を置く者としての責務だと私は考えます。


ですが、還元することで、それ以上のなにかを自分が得ているという感覚があるのもまた確かなことです。現任者各々が、日々、真摯に現場で実践をする中で得られたものを、業界全体としての利に昇華させるために、できることを、できる形で、やっていければよい、そう、心から思っているのです。



6月に開催する「スーパービジョン研修」は、そのようなことを体現するひとつの場になると考えています。本研修は、参加要件を設けていないません。参加対象者は以下の通りです。



1SVに興味のあるSW

2SVを受けたいと考えるSW

自分ならこのようなSVが受けたいという方もぜひ参加してください。

経験のあるSWと経験の浅いSWとの共同でより良いSVの体験の場としたいと考えます)



ここで、参加申込者からのコメントをひとつ紹介します。

「実務経験が長くないとバイザーにはなれない」のではなく、例えばピアでも出来るようなヒントを得たいと思っています。他団体のSV研修は、受講要件(経験年数や基礎研修を履修しているか等)が厳しいものが多く、これまで受講する事が出来なかったので、参加を希望させていただきました。」



現に、入職3年前後で部署のトップとして入職1、2年目の指導をしなければならない現任者がいます。スーパーバイズに権威主義はいりません。必要なのは「経験のあるソーシャルワーカーと経験の浅いソーシャルワーカーとの共同でより良いSVの体験の場」なのです。

「教える」、「教えを請う」という場(装置)は、両者を支え合いながら成長させる。スーパーヴィジョンは、そんな場をつくるべきなのだ。そう思っています。



一緒に、共同で、より良いスーパーヴィジョンの体験の場をつくりましょう!お待ちしています!

(現在15名申込あり。講師と相談の上、先着順になりましたので、お申し込みはお早めに)


詳細・申し込みはこちらから6/13都内開催スーパービジョン研修『SWにとってスーパービジョンとは-はじめの一歩-』

*各職能団体に問い合わせて、スーパーバイザーを紹介してもらうという方法もあります。ぜひ、お近くの協会に問い合わせをしてみてください。


以下のように大学で行っているところもあります。
*聖学院大学総合研究所 人間福祉スーパーヴィジョンセンター
http://www.seigakuin-univ.ac.jp/souken/spv/index.html


<スーパーヴィジョンの概要について知りたい方に>
*「職場外スーパービジョンの試み 山口みほ 浅野正嗣(研究ノート)」日本福祉大学社会福祉学部・日本福祉大学福祉社会開発研究所 『日本福祉大学社会福祉論集』 第 119 号 2008年8月
http://research.n-fukushi.ac.jp/ps/research/usr/db/pdfs/00013-00007.pdf

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