ソーシャルワーク業界の人材(新人)育成について考える-(2)-
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私が考える一案は、「教育的資源を一番多く投入する必要のある時期(つまりは新人)の人材教育を一手に引き受ける組織」と、「そこで教育された人たちをその後受け入れる組織」という役割分担を行うべきだ、ということです。つまりは、仕組みをつくる、ということです。その仕組み作りを、まずは地域を定めモデル化してみる、ということです。
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今回も、前回に引き続き、私見を述べさせていただこうと思います。
例えば、「教育基幹組織」を職能団体が認定します。「教育基幹組織」になることで、ブランディングがされ、優秀な人間を囲い込めるメリットが生まれるという仕組みをつくり(インセンティブを与え)、「教育基幹組織」を増やしていき、業界の教育的資源の最適配置を進めていくということが考えられます。教育基盤組織は、各地域、医療、介護、障害…etcなど、4-5領域の組織で担います。
例えば、
A地域:B病院、C居宅介護支援事業所、D精神保健福祉センター、E介護保険施設
のような感じです。
A地域:B病院、C居宅介護支援事業所、D精神保健福祉センター、E介護保険施設
のような感じです。
「A地域教育基盤組織ネットワーク」として、採用はネットワーク全体で行います(その業務だけを行う一般社団とか何かほかの組織体が必要になるかもしれませんが)そして、「A地域教育基盤組織ネットワーク」で採用した人たちを、各組織で、数ヶ月毎にローテーションをし、各組織で手厚い教育を受けながら現場実践を踏みます。
2年間で「A地域教育基盤組織ネットワーク」を卒業することとし、その後は、各教育基盤組織に採用されるか(想定されるは、優秀なリーダー候補)、同地域の非教育基盤組織で人材が欲しいところへのリクルート網をきちんと地域レベルでつくっておいて、そこを通して、新卒や業界未経験者を採用して育てる能力のない組織(非教育基盤組織)に卒業していきます。当該地域の教育リソースのある組織(教育基盤組織)がネットワークを組み、「地域レベルで人材を育成する」、そして、職能団体や大学が「教育基盤組織ネットワーク」をバックアップします。
非教育基盤組織が、組織の体力に見合わない採用をすることはしなくていいというのは、業界全体のリソースを考えても合理的ですし、こういった「地域単位」で教育基盤組織を複数が担うモデルは、ネットワーク間で横断的に人材を育成し、かつ交流させることになるので、地域全体でみたときにも「強い人的資源」を増やしていくことにもなるし、人を通して組織間の交流がすすみ、地域レベルでの組織連携の面でもメリットが大きいように思います。(人を介して組織の評判も広まりますので、尚更)
教育基盤組織が、その教育的アドバンテージにより、求職者増によってブランディングされて、当該地域で「人材を選べる」ということになっていくと、組織としても教育基盤組織への認定を受けるためのインセンティブが働くでしょう。
しかも、非教育基盤組織にとっても、2年間複数領域で教育を受けながら実地を踏んできた人を採用できる、すなわちそれなりに即戦力になる人を獲得できるので、「教育」に少ない組織のリソースを割かなくても済みます。
人材採用・教育にかかる2年間分のコストは、教育基盤組織と非教育基盤組織で作るネットワークで全体で負担すればいいでしょう(一般社団化して補助金申請したり、職能団体から補助金を出すのも一案ですね)
と、このように考えています。
教育は職能共同体を存続させるために必要な「贈与」です。この業界をよくしていきたいと考えるのであれば、現場にいる人間として、現任者の教育について、どのように自分が寄与できるのかを考え続けていくべきだと私は思います。
1人ではできないことも、2人、3人であればできるはずです。教育に寄与することは、自分が通ってきた道を、2人、3人目が通れるように舗装することと同義だと考えます。それこそが、自分を育ててくれたクライエントの方達、諸先輩方たちへの恩返しになるのではないかと私は考えます。ですが、そうは思えども、少数の人間の意思に頼っているだけでは、現場での人材育成はどうにもならないように思えるのです。
だからこそ、私はまず、仕組みをつくりたいと考えます。
今回提案した一案は、それを実行していく過程で、業界に存在する人的リソースの可視化という作業が必要になります。その作業によって、私は、地域レベルで様々な人材育成モデルが生まれるだろうと想像しています。
私は、教育は、自分が膨大な時間をかけて得たものを後世に継承するという素晴らしく意義のあることだ思っています。そして、ソーシャルワーク業界をひとつの共同体に見立てた時、教育に関わることは、共同体存続のための「贈与」でもあると考えます。
自分が勝ち得たものを伝え教えていくことで、それは結果、未来のクライアントのために活きる。教育に関わることで、自分が得たものが社会に生み出す価値は増やすことができるはずだと、ずっとそう考えてきました。
そうは言えども、「現場は忙しい」です。それゆえ、個々人の意思力で為すことが難しければ、仕組みをつくっていくべきだと考え、2回にわたり私見を述べさせていただきました。
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