”問いを立てる力を鍛えるための定義化のススメ”〜シリーズ『対人援助職として「問いを立てる力」を鍛えるための3つのエントリ』〜
公開日: 2014/06/11 思索 勝手にブックレビュー 読書記録 問いから言語化に至るプロセス
問うという行為は、議論している話題または問題をその問いがもつ枠組みでくくろうとする行為、またはその枠組みで問題がつかまるはずであるとする態度表明でもあります。
問いと答えは一般に対になっています。ですから、問いの仕方自体がすでに答えの出し方や答えのあり方を限定していることになります。
その問いがどんな枠組みで世界を切り取ろうとしているのかは自分で強く意識できていない状態で相手に問うことをすると、こんどは相手からその「問い」の意味について聞かれる可能性が生じます。その相手からの問いに十分答えられるだけの準備が、問うことには要求されるのです。
論理表現のレッスン:福澤一吉著から抜粋
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本エントリでは、"「問い」とは「考えるための材料」を生み出すもの"と定義します。
他者とのコミュニケーション以上に自分自身が「考える」という行為を成すための補助具として、「問い」を定義しているわけです。
その上で、多くの良質な問いを生むためには…
・日々の気づきの蓄積が大切。
・問われる環境に自分を置くことが大切。
・問いの射程距離(ミクロ、メゾ、マクロ)を考えること
この3つが重要です。
上記のように、日々頻繁に使用する言葉や物事に対する自分なりの定義を与えることで、ぼんやりとしている物事の輪郭を浮き彫りにしてあげることができます。
例えば、私は「成長」という言葉をハタチの時に以下のように定義しました。
"「成長」とは昨日とは異なる言葉で、自分の大切にしている事柄に対し、新しい表現を得られたときである"
今でもこの定義は色褪せず、アップデートの必要もなく、自分の中で稼働し続けています。
8年間、「成長に対しての同一の定義」を用いてきて思うのは、「生きていく上でのしあわせを得るハードルを低く設定する」という自分にとっての生存戦略であったのだな、ということです。
というのは、今、このエントリを書いている時も、私自身の中に新しい言葉が生み続けられる限り、私は自分が与えた「成長」の定義によれば、成長してることになるわけですから。成長を感じられれば、嬉しいし、もっと頑張ろうと思うことができます。
生存戦略、というのはつまり、自分が与えた成長への定義によって、嬉しい、もっと頑張ろうと感じることのできるハードルを、低くすることができたということなのです。
定義は常にアップデートされていくものですから、その都度、暫定的なもので構いませんので、まずは定義化を試みてみることをおすすめします。
■■やってみよう!問い立てレッスン■■
「自分にとっての成長とはなにか?」という問いについて、考え、自分なりの定義付けをしてみよう。
このレッスンは骨は折れますが、言語化能力を鍛える上で非常に有用です。本エントリでは、「なにを定義化するか」、すなわち、どのような事柄を定義化すべきか、というテーマ設定について考えてみたいと思います。
定義化=既存の概念を自分の言葉で具体的に定義することです。
自分の経験に基づく言葉により、定義化を行なうことは、既存の概念に対する曖昧な理解を一旦リセットし、自分の感覚に基づいて理解することを助けてくれます。
「なにを定義化するべきか」という問いについては、"定義化することで、自分の行動変容に結びつくようなこと"が適切だと考えます。
定義化は、しっぱなしでは、意味がありません。自分の言葉で定義することで、自分の行動変容を促したり、その要素となるようなことがらを選ぶべきです。
私個人を例に出し「成長」を定義しよう、とお伝えしました。
その理由は、「成長」という言葉が持つ意味自体がポジティブであり、かつ、未来に向かって自分を変容させるために、定期的に、定義化を行ない、必要があれば再定義(更新)をする必要がある概念だと考えているからです。
定義化には問いがセットになっています。例えば…
「成長とは(自分にとって)なにか?」
「仕事とは(自分にとって)なにか?」
「幸せとは(自分にとって)なにか?」
というような問いが、定義化の前提条件として存在しています。
定義化した概念に、日々の出来事を照らし合わせてみることで、この定義化が自分にとってしっくりくるものか、学びを誘発し、行動を変容するために適切な定義となっているか。再定義が必要な時期にきているかなどを確認することができます。
言葉は行動を律する作用も持っています。行動変容についてのもう少し突っ込んだ話はまた改めてさせていただこうと思いますが、言語化し定義化した概念を、日々、行動の指針として位置づけ、時間を積み重ねることで、また新たに「定義化すべき概念」が生じてく
ることもあります。
例えば、成長という概念の定義化に、「仕事」が密接に結びついているとしたら、「仕事とは(自分にとって)なにか?」という新たに定義化すべき概念が生まてくるかもしれません。
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