「聞く身体」〜コミュニケイションのレッスン〜
公開日: 2014/02/05 MSW SW言語化ゼミ コミュ論 思索 実践モデル 問いから言語化に至るプロセス
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本エントリは、SCAメルマガ「ソーシャルワークタイムズ」
内の記事からの転載になります。
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対人援助職の「聴く」ということについて
考えるとき、私は「深呼吸」や「海の底に
潜るイメージ」を思い浮かべることがあり
ます。
考えるとき、私は「深呼吸」や「海の底に
潜るイメージ」を思い浮かべることがあり
ます。
そのイメージの中で、援助者がする「質問」
が、「対象となる人への理解、問題を共有
しようとするための質問」か、それとも、
「援助者自身を安心させるための息継ぎす
るための質問」か、ということの見極めと
自覚が必要だと思っています。
例えば、インテーク(初回)面接で、対象
となる人の言葉を、遮らず聴き続ける(潜
り続ける)ことは、非常に体力がいる。そ
して、想像力がいるように思います。
というのは、聴く側は、相手がどこまで潜
り続けるのかわからない中で、目の前の人
が、どう変わっていくかを記憶しながら、
どこを目指していくのかということを想像
しなくてはならないからです。
これは結構、しんどいし不安になります。
それに耐えきれなくなり、「援助者自身
を安心させるために息継ぎするための質問」
をしてしまうと、相手が自分の深度を下げ
る行為(語り)は強制ストップされてしま
うのではと想像しています。
質問は否応にも相手の語り(思考)の深度
を一旦ストップします。 ひとつ言えるの
は、相手が息継ぎするのと同時に、質問を
挟むといいのでは、ということ。
これは、特にインテーク(初回)面接に言
えることだと思うのです。
相手が自分の深度を下げる行為(語り)を
妨げず、共に深度を下げていくには、深呼
吸をするイメージで面接に臨むとよいと私
は思っており、ですから、面接の導入部分
に「深呼吸をして潜る」というイメージを
します。
”クライエントの文脈”に深呼吸をし潜って
いくのです。そうすることで、慌ただし
い気持ちで面接へ入ることを極力避ける
ことができるような感じがします。
とここで、一冊本を紹介させていただき
ます。
「コミュニケイションのレッスン
聞く・話す・交渉する」
著:鴻上尚史氏
演出家として30年間以上多くの役者を
みてきた著者が語る「コミュニケイシ
ョン論」です。
コンセプトは
「コミュニケイションは技術だ」
技術である以上、野球やサッカーのよ
うにやればやるだけ上達する、という
わけです。
本書は一貫して、「身体性」を非常に
大切にしている印象を受けました。
以下、対人援助職に引きつけて考える
ヒントになるであろうと思われる箇所
を抜粋します。
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(P073)
「聞く」
カラダ〜リラックスしたカラダとは〜
ちゃんと「聞く」ためには、「聞く」に
相応しい身体が必要です。
それは、リラックスした身体です。深く
リラックスすれば、あなたは深く人の話
を聞くことができます。そして、それは
、話している人にも伝わるのです。この
人は、全身で聞いていると感じ、相手は
気持ちよく話すことができるのです。
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ここまでは、読めば、「ああそうだよな。
わかる。でも、それが難しいんだけどな」
と多くの人が思います。しかし、本書は、
実際に「どう行動するか」という”行動の
ナビゲーション”が為されています。
以下再度抜粋。
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・リラックスして聞くためには、身体の力
を抜き、自分自身の重心を下げる
・身体の中心、丹田を意識する(丹田とは
おへそから指4本分下の部分)
・緊張しているときは深呼吸をする。
一呼吸ごとに、空気が身体の下、ヘソの下
あたりに入っていくイメージを持てば、身
体の重心も自然に下に下がります。
・落ち着いたとき、人間はお腹から、つま
り丹田を中心にして動き始めます。このこと
は一般的に「落ち着いたら重心が下がり、
舞い上がったら重心があがる」と理解され
ています。
パニックになったとき「落ち着け!」と言い
聞かせれば言い聞かせる程余計にあせってし
まいます。そういうとき、「落ち着こう」と
一切思わないで、「身体の重心を下げよう」
とするのです。
つまり、「落ち着いている時は、カラダの
重心が下がっている」ということは、逆に
「カラダの重心を強引に下げる」ことによ
って、「落ち着く」ことが人間には可能な
のです。
(抜粋ここまで)
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・「話を聞くときは、リラックスして聞く」
・「話を聞くときは、身体の重心を下げて、
(つまりはリラックスした状態で)聞く」
この2つの文章はほとんど言っていることは
一緒ですが、大きく違うのは、”行動のナビゲ
ーション”がされているか否か、ということです。
(私はこの言葉を兄貴的師匠から聞きました)
「リラックス」は状態です。ですから、万人に
とって共通の定義はありません。
「身体の重心を下げる」というのは行動です。
誰しもができる行動まで落とし込んだ、”行動
のナビゲーション”が為されているか、いや、
そこまで落とし込んで、モノゴトを伝えること
ができるか否か、というのは、それに対する誠
実さの現れでもあり、そしてそこまでモノゴト
を考え抜いたことの証左でもあると言えるのだ
と思います。
「ヘソから指4本分下(丹田)を意識し、重心
を下げる」ことは、今これを書きながらでも、
読みながらでもできます。
私はこの文章を読み、インテーク面接の前に、
冒頭に記した「深呼吸」や「海の底に潜るイ
メージ」を思い浮かべていたのは、行動レベ
ルでは「重心を下げていた」のだと気づいた
のです。意識してみると、確かにそうでした。
私は、対人援助職の「身体性」について最近
考えることが多いです。
どうしても、頭で考えるだけでは捉えること
が難しいことを、どう身体と結びつけて考え
るか。そんなことを思案する日々です。
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