発表抄録:クライエントを支えるチームを構築するための「連携」アプローチについての一考察
過去の発表:抄録より。
「連携」アプローチについての一考察-認知症患者と家族への援助過程から-
キーワード 連携 恊働 チーム
【目的】 保健・医療・福祉領域において「連携」の重要性が叫ばれて久しい。吉池らは、同 じ目的をもつ複数の人及び機関が協力関係を構築して目的達成に取り組むことを 「恊働」とし、恊働を実現するための過程を含む手段的概念が「連携」であり、恊 働における「連携」の実態として「チーム」を位置づけている1
ソーシャルワーカーが、クライエントを支えるチームを構築する必要性があるとア セスメントした際、他機関・他職種に対し、ソーシャルワーカー自身のケースに対 するアセスメントを伝え、チームへの加入を依頼することになる。上記吉池らの定 義に当てはめると、その際に取られる手段が「連携」であり、そこには、意図的な 根拠に基づいたアプローチが存在するはずである。
本演題では、筆者が担当した実際のケースをもとに、ソーシャルワーカーが行う、 意図的な根拠に基づいた他機関・他職種への働きかけを「連携アプローチ」と称し、 その内容を定義することを目的とした。
【方法】 事例:(概要省略)
上記ケースへの援助過程において、クライエントを支えるチームを構築し、協働を するために、筆者が他機関・他職種に「期待する(した)役割」と、実際に採用し た「連携アプローチ」について検討、分類を行った。
【結果】 他機関・他職種に対し、期待する役割について、以下の通り分類できた。
Ⅰ.当該機関・担当者の明確な役割となっているもの Ⅱ.担当者の力量・モチベーション等で拡張されるもの Ⅲ.担当者が職権等により所属機関内に働きかけ、拡張されるもの
その上で、「期待する役割」に対し採用可能な「連携アプローチ」について、以下 の通り分類できた。
1.論理的アプローチ 2.感情的アプローチ
【結論】 他機関・他職種に対し採用する「連携アプローチ」は、働きかける側のソーシャル ワーカーが、「他機関・他職種に対し、どのような役割を期待するか」ということ により異なる。その上で、「連携アプローチ」を「クライエントを支えるチームを 構築するために、他機関・他職種に対し、期待する役割 Ⅰ〜Ⅲ を明確にした上で 行う 1.論理的アプローチ 2.感情的アプローチ、の両者を組み合わせた働きかけ」 と定義できると結論付けた。
【おわりに】 他機関・他職種への働きかけに対し、「連携アプローチ」という定義による基準を 与えることにより、それに即し、「なぜ、アプローチをした相手の反応がよくない のだろう」という疑問を、自身のアプローチ方法がどうだったか、ということに引 き付けて振り返ることができるようになった。また、「連携アプローチ」を行うに は、大前提としてケースに対するアセスメントがしっかりなされていることが必要 なのだということを再認識するよい機会となった。
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吉池毅志,栄セツコ: 保健医療福祉領域における「連携」の基本的概念整理 精神保 健福祉実践における「連携」に着目して. 桃山学院大学総合研究所紀要 34(3), 2009-03-18,109-122,
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