対人援助職におけるセルフケア概論 vol1 "予防的セルフケア”という観点から考える

公開日: 2013/10/07 MSW セルフケア論. ソーシャルワーカーが自己覚知をすすめる上で読んでおきたい書籍 思索



ここ数ヶ月、メルマガで「対人援助職としての心と身体」について書いています。
その理由は、「心と身体」に目を向けることで、対人援助職として「ベストパフォーマンスを提供できる身体の”素地”」をつくることができると考えているからです。


本エントリでは、「対人援助職におけるセルフケア概論 vol1 "予防的セルフケア”という観点から考える」と題し、自らをサンプルとして考えてきた「セルフケア論」の概論をお伝えさせていただこうと思います。


………………………………………………………………………………………

1.予防的セルフケアとは「心と身体の柔軟性を高める」こと


仕事もプライベートも、当然ですが、為すことの土台には、自分の”カラダ”があります。
ですから、健康な心と身体でいること、その状態を保てるようにカラダをケアすることは、優先順位として高位にあるべきだと考えます。



支援者へ支援、援助者のケア、援助者としてのセルフケア等、援助者としての心と身体をケアするための方法論は、様々な領域で語られています。


私は、「対処」としてのセルフケアも非常に大切だと思いますが、「耐性」を上げる等の「予防としての」セルフケアも同様に大切なことだと考えます。


「予防的セルフケア」という観点から、「ベストパフォーマンスを提供できる身体の”素地”」をつくることを考えています。


「セルフケアを必要とする頻度を下げる」
「ストレス耐性のある心と身体をつくる」


つまりは、「心と身体の柔軟性を高める」という考え方です。


………………………………………………………………………………………


2.予防的セルフケアに必要な3つの要素


予防的セルフケアを考えたとき、心と身体は「強くなる」必要性はないと考えます。
「心と身体の柔軟性を高める」とは、心と身体にかかる負荷に対して、「心と身体が柔軟性をもって、負荷の衝撃を和らげ、跳ね返したり、吸収し、消失させる」というイメージです。


「セルフケアの頻度の低い、ストレス耐性のある」=「心と身体の柔軟性をあげる」ためには、自己覚知と、それに伴う、自分に合った「心と身体の作り方」、「セルフケアの方法」を考える必要があります。


1.自己覚知
2.自分にあった対人援助職としての心と身体のつくりかた
3,上記2つを踏まえたセルフケアの方法


この3つは、単独では存在し得ず、3つが関係し合い、影響を及ぼし合います。
各論については、今後別エントリで記します。


………………………………………………………………………………………


3.私が「予防的セルフケア論」を考えるに至った原点


概論である本エントリでは、各論に入る前に、まず私の個人的エピソードをお伝えさせていただこうと思います。以下、自分語りになりますが、お付き合いください。


私が、「予防的セルフケア」の大切さを真剣に考えはじめたのは、ここ2年くらいです。


当時、現場5年目に突入した私は、出来ることも増え、充実感を得ながら仕事をすることができていました。ですが、忙しくなるとともに、「自分のエネルギー量がどうしても、足りなくなってくる」ということを感じることが多くなりました。


この場合の、「忙しい」は、単に、私の仕事の仕方が生み出している「構造的忙しさ」であったのですが、それに気づいたのは、もっとずっと後のことでした。



2年前当時のBlogに、私は以下のように記しています。

「自己覚知についての個人的見解:2011.6.4」

………………………………………………………………………………………



【自己覚知は自分のパフォーマンスを最大限に発揮する状況を常につくりだすために必要】 
自己覚知を語られるときによく言われる、自分がどんなことに怒ったり、悲しんだり、感情を揺れ動かされるのかなどということを「自分の理解の範疇に置いておくこと」により、あらかじめ自分の身体と心に生じるであろう負の変化を予測できるようになります。

その結果、自身に生じる負の変化に対する防衛反応、事前対処を取ることができ、外的な要因に可能な限り左右されずに、自分自身の中に余裕を生み、目の前にある事象に対し自分のエネルギーの多くを投入することが出来ることが可能になるのです。 
つまりは、自分自身のパフォーマンスを最大限に発揮する状況を自分でつくりだすわけです。メジャーリーグベースボールで活躍しているイチロー選手とか、まぁ、いろんなところでいろんな人が言っていることですね。

つまりは

自分自身のパフォーマンスをいつどんなときも最大限に発揮する状況を常につくりだせる心と体の準備をする。(よくいうところのモチベーションの維持も含まれますでしょうか)

そのためには

あらかじめ自分の身体と心に生じるであろう負の変化を予測し、防衛反応、事前対処を取る必要がある(負の要因から受けるダメージを最小化する)

防衛反応、事前対処を取るためには

自分がどんなことに怒ったり、悲しんだり、感情を揺れ動かされるのかなどという価値観を「自分の理解の範疇に置いておくこと」が必要。(つまりは、これがよくいう自己覚知の部分)


なので、自己覚知って言葉が対人援助職の専門用語みたいに使われているだけであって、やってることは多くの業界で活躍している方たちが自分自身のパフォーマンスを最大限に発揮する状況を常につくりだすためにやっていることのひとつだと思うわけです。

………………………………………………………………………………………




私は”エネルギー放出量のコントロール”が難しい人間です。


例えば1日に3件の面接が入っている場合、3件目の面接の方が、1件目の面接に比べて、「集中力が落ちている」=「質が落ちている」と自覚するようになりました。


朝一番の面接 >夕方遅い時間の面接


私個人の援助者としてのカラダの中には、上記の不等号が成立しているということに気づいたのです。


当時5年目の私にとって、この自覚は「許しがたいもの」でした。


「朝の自分の方が、夕方の自分よりも、質的にいいものが提供できる」



このようなことが許されるはずがない。そんな馬鹿げたことはない。



そのような自覚が、

「クライエントに対して、常に自分が持ち得る資源を最大限投入し、ベストパフォーマンスを提供することのできる境地には、ソーシャルワークの価値や倫理、知識、技術”だけ”では達し得ない」



と、私に考えさせるようになりました。


例えば、現場において、緊急性が無かったり、様々な都合が許すようであれば、「今日はもうエネルギーが枯渇している」という自覚がある場合、可能な限り、面接や自分の行動を先送りします。


ヘトヘトになりながら、クライエントに対峙して、「今日もわたしは、こんなに疲れて、こんな時間まで、よく頑張った」と思うのは本当にくだらない、今すぐ捨て去るべき精神論です。


私が相談者であったなら、「忙しそうで余裕が無く疲れた顔をしている状況」よりも、「ゆったりと余裕がありそうな状況」の人に相談したいと思いますが、みなさんはいかがですか?


「今日もわたしは、こんなに疲れて、こんな時間まで、よく頑張った」


こんな、クソくだらない自己満足精神論の「エサ」になんて、私がクライエントだっ
たとしたら、絶対になりたくありません。
そんな援助者なんて、願い下げだ、と私は思うのです。


どんなに高尚な知識や技術を有していても、それを「扱う人間」が、常にベストパフォーマンスを提供できる身体に最適化されていなければ、知識や技術を最大限活かしてあげることはできません。


これは、断言できます。


私は、ソーシャルワークの使い手であるソーシャルワーカーとして、自分のベストパフォーマンスをどのようにすれば常に発揮できるのか?という問いをこの2年間、思考し、試行を続けてきました。




それが、冒頭からお伝えした以下の考えに至った原点です。




私は、「対処」としてのセルフケアも非常に大切だと思いますが、「耐性」を上げる等の「予防としての」セルフケアも同様に大切なことです。 

「予防的セルフケア」という観点から、「ベストパフォーマンスを提供できる身体の”素地”」をつくることを考えています。

「セルフケアを必要とする頻度を下げる」
「ストレス耐性のある心と身体をつくる」
「心と身体の強度をあげる」という考え方です。



私は、援助者として疲弊することを、可能な限り回避できる方法を常に考えています。
それは、クライエントに対して、ベストパフォーマンスを提供する上でも、援助者として心も身体も健康でおり、長く働き続けるためにも、大切なことだからです。


今後も引き続き、「対人援助職におけるセルフケア論」について、「予防的セルフケア」という観点から記していく予定です。


………………………………………………………………………………


  • ?±??G???g???[?d????u?b?N?}?[?N???A