「ミッション・ロンダリング」〜行為は自己実現欲求と近接シンボルによってミッション化する。〜

公開日: 2013/10/08 MSW エッセイ キャリアデザイン 思索 自己覚知 社会問題



私は、よく「ミッション」という言葉を用います。

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ミッションの語源はラテン語で「送る」などを意味する mittere です。 
その昔、キリスト教の礼拝の終わりに、司教が「Ite, missa est.(行きなさい、解散する)」と告げる習慣があったことから(missa est は受動完了形)、この表現が「神の言葉を送り届けよ」と解釈されるようになりました。 
ゆえにmission は「伝道」の意味を表すようになったのです。その後 mission は、広く一般に「任務や使命」の意味でも用いられるようになりました。
[三省堂辞書サイトより]
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前エントリ:対人援助職としての職業アイデンティティを構成する要素について考える」において述べた通り、私は、「理想像、情熱、努力、使命」などという内発性要素を主食とし、職業アイデンティティを形成してきた人間です。


本エントリでは「使命」を「自分が為すべきだと心底信じ切ることができること」と定義します。

その上で、「ミッション・ロンダリング」〜行為は自己実現欲求と近接シンボルによってミッション化する〜と題し、私の考えを述べていきます。




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目次

1.ミッションは、人によって、創られる。

2.自己実現欲求、近接シンボルが、自分が為すべきだと心底信じ切ることを可能にする
3.遠隔シンボルの存在が、行為を「簡易ミッション化」させる。
4.ミッション・ロンダリングは悪いことではないけれど…自覚せよ!!


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1.ミッションは、人によって、創られる。


ある日突然、「神の言葉を送り届けよ」という伝道としての役割を与えられたことにより生まれた「ミッション(使命)」は、この世にほとんど存在しないのでしょう。


私は、この世の中で語られる個々人の「使命(ミッション)」と呼ばれるもののほとんどは、「自分が為すべきだと心底信じ切ることにより、”為すことが使命(ミッション)化する”」という、人が創り出したものだと思っています。



「行為がミッション化する」とは、「自分が為すべきだと心底信じ切ることにより、その行為をなすことが自体が使命(ミッション)化する”」ということであり、



「これは、私がやらねばならないのだ」
「私は、”誰かの何か”を引き受けたのだ」



このような想いが生じたときこそ、自分が為すことが、ミッション”化”した瞬間であると私は考えています。そして、
そのとき、そこには、「ミッション化」させる、なにかが存在しているはずなのです。



使命=「自分が為すべきだと心底信じ切る」




上記が成り立つとき、その土台には「自己実現欲求と、近接シンボル」が存在すると私は考えます。



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2.自己実現欲求、近接シンボルが、自分が為すべきだと心底信じ切ることを可能にする


私は、多くの人にとっての「自分の為すことがミッション化する」ための要素は、「自己実現欲求と近接シンボル」であると考えています。



自己実現欲求は高次欲求ですので、ここで改めて定義することもないでしょう。



近接シンボルとは、「ライフストーリーの中に存在するイベントにより形作られた個々人の中に形成されたセンシティブなもの」と定義します。



近接シンボルは、自分ごとです。自分に近いものですから、自分に返ってくるメッセージ性も強い。自分事ですから、メッセージはときに獣(ケモノ)となり、所有者である自分を傷つけ、襲い、ときに呪うこともあるでしょう。ですので、自己実現欲求でさえも、相殺してしまうかもしれない、非常にセンシティブなものなのです。



近接シンボルの対義語として、「遠隔シンボル」という言葉があります。



私は、以下『上野先生、勝手に死なれちゃ困ります 僕ら介護不安に答えてください

(光文社新書)』上野千鶴子,古市憲寿http://goo.gl/FTY32 の中で、比喩的表現として「遠隔シンボル」という言葉を目にしました。


現代の若者が「社会の役に立ちたい」と思うとき、
行為が「簡易ミッション化する」ことについて、示唆的な一文です。



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古市氏:



『「社会役に立ちたい」という思いは、カンボジアや被災地に対しては向けられるけれど、肝心自分たち集団には向かない。外部に対して手を差し伸べようっていう動きにはなるんだけれど、自分たち足もと社会を変えよう、という動きにはならない』(P206)


上野氏:

不安はあるが不満はない若者現状を反映しているかもしれない。」つまりは「遠隔シンボル(例:カンボジアや被災地)によって現実逃避する」と述べ、高齢社会では近い将来誰もが社会的弱者になるかもしれないというわかりきったシュミレーションできない「そ日暮らしメンタリティ」


と評しています。


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「不安はあるが不満は無い」「遠隔シンボルによって現実逃避している」という指摘は、「ミッション」が、自分ごとであるかそうでないか(近接シンボルか、遠隔シンボルか)ということを考える上で、非常に示唆的なもでした。




要するに、自己実現欲求を満たすための行為の対象が、

遠隔シンボルか、それとも、近接シンボルなのかという違いです。

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3.遠隔シンボルの存在が、行為を「簡易ミッション化」させる。



自己実現と呼ばれる高次欲求は、「自分から距離(多様な意味での)遠い出来事に対する行為をミッションすること」、上野氏言葉を借りれば、「遠隔シンボル(自分から遠い出来事)によって、”簡易”ミッションする」ことで、満たすこともできるのです。



ですが、「簡易ミッション化」されたものは、長続きすることが難しいでしょう。



遠隔シンボルは、自分事ではありません。

ですから、自己実現欲求の変化があったとしても、遠隔シンボルそのものと個人の関係性はさして変化しないため、自己実現欲求を満たすことが難しくなる時期が来るわけです。


自己実現欲求を満たすことが難しくなる=「遠隔シンボルから、得られる自己実現欲求を満たすエネルギーが枯渇する」というイメージです。


もともと、遠隔シンボルは、自分事でも何でもありませんから、得られるエネルギーがなくなれば、それに対し、何かを為す必要を感じ得ることも難しくなります。



だから、簡易ミッション化されたものは、長期に、永続的に、人の自己実現欲求を満たし続けることはできないと私は考えるのです。



ですから、自己実現欲求を満たすための行為の対象として、遠隔シンボルしか「選べない」場合、単発的な「簡易ミッション」として成り立ちはしますが、完全なる「ミッション化」が困難なため、簡易ミッションを繰り返していく、「ミッション・ロンダリング」に陥るのです。



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4.ミッション・ロンダリングは悪いことではないけれど…自覚せよ!!



やりたいことを見つけにいく。(為すべきことがあるはずだ!)
海外に自分探しの旅に出る。(それは、ここではない何処かにあるはずだ!)
海外のボランティア団体に関わる。(これだ!私の為すべきことを見つけた!!)
やっぱり日本に帰ろう(ここには、私が為すべきことがない)
会社に就職!!(組織で、私が海外で見てきた知見を活かそう!!)
フリーランスになる!!(やっぱり、私が為すべきことは組織じゃあない!)



一例ですが、この構造こそが、私が言うところの「ミッション・ロンダリング」です。



遠隔シンボルを見つけては、自己実現欲求をフォーカスし、簡易ミッション化し、自己実現欲求を満たす。ですが、遠隔シンボルは、自分ごと化しにくいので、長続きしないのです。



遠隔シンボルは、他者によって、シンボライズされますが、近接シンボルは、自らのライフストーリーをなぞり見出し、シンボライズし
ていくしかないのです。


遠隔シンボルは、用意されています。(既知です)


近接シンボルは、自分事であり、ライフストーリーの中に存在するイベントにより個々人の中に形成されたセンシティブなもの」であるわけなので、見出し、シンボライズするには、多大な労力を必要とします。(つまりは、未知の要素が多いのです)




であるから、用意された遠隔シンボルで、自己実現欲求を満たそうとしても、それは簡易ミッションにしかなりえないので、「ミッション・ロンダリング」を繰り返すのです。




だからこそ、自己実現欲求と自分が為すべきだと心底信じ切ることができること使命(ミッション)】」とのあいだにあるものを、自ら中でとらえていこうとすることが大切だと思うのです。



”簡易”ミッション化には、自己実現欲求と遠隔シンボルが必要です。


ミッション化には、自己実現欲求と、近接シンボルが必要です。



あなたが、今、自分が為すべきだ」と信じている、信じていようと思っているものは、どちらでしょうか?



少し、立ち止まり、考えていただくきっかけになれば、嬉しいです。





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