【話を聴くために必要なことシリーズ4-クライエントの困難への対処法を聴く】
公開日: 2013/08/07 MSW SW解体新書制作委員会 思索 話を聴くために必要なことシリーズ
「数ヶ月くらい前から、認知症がすすんできて、排泄も失敗するようになり…」
「1ヶ月前くらいから、家の中で転ぶことが多くなって、目が離せなくなった…」
クライエントの初回面接で語られる「困りごと」についての語り。
その語りの中には、クライエントが過去に自身の問題にどのように対処をしてきたかという「問題への対処・解決に向けた行動」という、援助を共にすすめていく上で、とても大切な事柄が詰まっています。
過去、シリーズでお伝えしてきました【話を聴くために必要なことシリーズ】
1.「過去、困りごとにどう対処してきたか」というプロセスを知る。
「どのような」困りごとが、
「いつ頃から」起こるようになり、
「どのような方法で」対処し、
「その結果、どうなったか(どうなっているか)」
クライエントから、問題解決のために投入できた時間、資源(ヒト、モノ、カネ)を、教えてもらうには、「過去、困りごとにどう対処してきたか」というプロセスを開示してもらう必要があります。
資源(ヒト、モノ、カネ等)の中で、不足しているもの。
資源(ヒト、モノ、カネ等)の中で、焦点化し、強化すべきもの。
資源が不足しており、新たにつないだり、つくりあげたりする必要があるもの。
その判断をクライエントと共に行なうためには、過去の「問題への対処方法」をきちんと、共有させてもらう必要があります。
2.「困りごとへの対処法」を共有することは、「個別化」に通ずる。
「過去、困りごとにどう対処してきたか」というプロセスをすっ飛ばして、援助者側が提示したステレオタイプのプランは、ときに、クライエントの既存の資源を過小評価してしまう危険性を有しています。
クライエントが有している既存の資源における、強化すべき資源、活用すべき資源を、手放すことを薦め(そのことに援助者側が無自覚だとしても)、ステレオタイプの資源の枠に当てはめようとするとき、そこに、ケースワークの原則である「個別化」は存在しません。
クライエントが為してきた”困りごとへの対処法”がわからないと、「今、ここから、はじめる」ことができません。「今、ここ」にフォーカスできないと、どうやっても、「クライエント不在感」が加速してしまいます。
喩え話ですが、何かをハサミで必死に切ろうとしているが、どうしても切れなくて困っている人に対して、「オオナタを使えばいい」と言うか、「ハサミのサビをまずは落とそう」と言うか…。
クライエントの「困りごとへの対処法」を尊重せずに為される代案の提示や、プロセスのすっ飛ばしは、「ああ、この人は、私のことをわかっちゃいない」という思いをクライエントに与えてしまうかもしれません。
そして、それは、「個別化」の原則に反するわけです。
3.クライエントとの援助過程は「今、ここ」からはじまる。
繰り返しになりますが、援助過程の開始時点において、クライエントが、「過去起きた(そして、今現在も継続している)困りごとに、どのくらいの時間、どのような方法で対処し、向き合ってきたか」を、きちんと教えてもらうことは、とても大切です。
クライエントの「今、ここ」を共有するこそが、援助過程のスタート地点です。
であるからこそ、「今、ここ」に至るまでの「過去の問題解決のプロセス」を教えてもらうことは、問題解決に向けた援助過程においても大切です。そして、同時に、クライエントを「個別化」して捉えるということの態度表明でもあるのです。
バイステックのいう「ケースワークの原則」は、表記通りの”原則”であり、援助過程のどの段階においても通ずる、「多くの場合に共通に適用される基本的なきまり・法則」です。
「援助過程において、常に共通して適用される基本的なきまり・法則」と考えたとき、「クライエントの困難への対処法を聴く」ということは、都度、共有させてもらうべきことなのです。
先日、私自身、このことを反省する出来事があったので、自戒も込めて。
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