急性期病院の医療ソーシャルワーカーが行うクライエントを支える地域のチームの創り方

公開日: 2013/05/14 MSW SW解体新书制作委员会 コミュ論 チームアプローチ 思索

本エントリでは、「急性期病院の医療ソーシャルワーカーが行う地域のチームの創り方と題し、私個人が考えていることについて記していきたいと思います。


急性期の医療機関でソーシャルワーカーとして働いていると、「病気での入院を機に、病気に付随する生活上の問題が露わになる」というケースに出会います。

そして、”生命に危機が及んではじめて、患者さん、もしくは患者さん家族を含めた世帯に、社会的な問題が堆積していたことが明らかになる”というケースに出会うことが最近多くなったような気がしています。


近所の人も、関わりはない。
民生委員さんも、知らない。
介護保険の申請はしていない。
地域包括支援センターもノーチェック。
区の高齢障害支援担当も、関わりはない。 …etc


地域で、離れ小島のように、存在している人、世帯(家)
そんなケースに出会うとき、わたしはまず、「ああ、これはチームメンバーを集めなければならないケースだ…」と思うところからスタートします。


イメージ論になりますが、急性期病院のソーシャルワーカーとして、限られた時間の中でクライエントを支える地域のチームを結成するために為すべきことは「ケースを支えるための(仮)支点になる、そして、ケースを支える(本)支点を探し、働きかけ、増やす」の2点だと考えます。以下に、概念図を記しました。




1.クライエントを支えるための(仮止めの)支点になる。

何より先に、露わになった社会的問題への初期手当(ファーストエイド)が必要になります。ここでまず、ソーシャルワーカーに求められるのは、クライエントの置かれている状況を一緒に共有し、対処すべき問題を整理し、その問題に対して、クライエント自身にどう舵を取ってもらうかということを一緒に考え、行動するという、”クライエントを支える仮止めの支点”としての役割です。そして、この過程でのクライエントの変化や揺れ(ポジティブなもの、ネガティブなもの共に)に沿い、サポートをすることも含まれます。


2.クライエントを支える(本止めの)支点を探し、働きかけ、増やす。

次に考えるべきは、クライエントを支えるチームメンバーを探し、チームへの加入を働きかけ、”クライエントを支える本止めの支点”としての役割を担ってくれる人たちを増やすことです。


医療機関は生活の場ではありませんし、生活する上で必要な機能を提供する場所でもありません。であるとしたら、医療機関のソーシャルワーカーとして、生活上の問題への対処が必要であるクライエントに対しサポートすべきは、「退院後に、クライエントを支える地域のチームを結成すること」であると考えます。(そして、そのチームのサブ・サポートメンバーとして医療機関のソーシャルワーカーも必要により加わります。ですが、決してメインメンバーには成り得ません。)


クライエントを支える地域のチームを結成すること=”クライエントを支える本止めの支点”を増やすことです。

”クライエントを支える本止めの支点”が増える過程で、医療機関のソーシャルワーカーは、”クライエントを支える仮止めの支点”としての役割を終え、”クライエントを支える地域のチーム”へ援助のバトンタッチを為すことができるのです。(そして、サブ・サポートメンバーに役割を移行します)



”クライエントを支える本止めの支点”を… 
1.探す→適切なチームメンバーを選定する。 
2.働きかける→チームメンバー候補者に、チームへの加入を打診する 
3.増やす→加入者を増やし、チームを結成する。


医療機関のソーシャルワーカーとして、まず出来るのは、上記のプロセスをしっかりと考え、”クライエントを支える地域のチームの結成”を戦略的に考えることだと思います。


ソーシャルワーカーひとりでできることは少ないですが、チームを結成することができれば、クライエントを支える本止めの支点は増え、より一層厚みのあり、安定感のあるサポートをクライエントに対して提供することができます。

私が、現場7年目の目標としてあげている「コミュニケーションをどうデザインするか」ということは、上記を為す上で、非常に重要な概念であると考えています。


私は、この過程をすすめていくとき、よく、漫画ワンピースを思い浮かべます。
仲間を探し、仲間を増やし、仲間に任せる。


ソーシャルワーカーは、ひとりではなにもできない。
シニカル過ぎる物言いですが、この意味を腹に落ちて理解できたとき、ケースワークのみではなく、「クライエントを支えるチームを結成すること」がもつ意味を、きっと理解できるはずだとわたしは考えています。



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