ソーシャルワーカーとして「コミュニケーションをどうデザインするか」ということについて考える
公開日: 2013/03/20 MSW SW解体新书制作委员会 思索
この仕事についてから、今までずっと、こちらの要求が通らない結果としての「○○はダメだ、△△さんは使えない」という言葉に対して違和感を拭えずにいた。
その言葉は、働きかける「こちら側」という主体を無視している。自分を省みずに、相手を責めるというのは、どうしても、おかしいと思わざるを得ない。だから、ずっと違和感が拭えなかったのだろうと思う。
自分は、この春、ソーシャルワーカーとして7年目を迎える。
現場7年目のテーマは“コミュニケーションをどうデザインするか”ということに尽きる。
そして、それは、冒頭に記した違和感を解消するためのひとつの方法でもある。
ソーシャルワーカーとクライエントという二者関係に完結することなく、面接場面で得たことがらを、どう院内のチームでのアプローチに活かすか。そのことを考えてきた。
ソーシャルワーカーに面接技術は必要だ。
けれども、それが至高の技術のように語られるのはものすごい違和感があった。
というのは、ソーシャルワークは面接技術だけで完結できるものではないし、面接技術は主に、クライエントとの信頼関係を築くことと情報収集という目的にとどまるからだ。
現場5年目のテーマは、”他職種・他機関に働きかける際にソーシャルワーカーが用いるアプローチ方法を定義化する”ということだった。日々のケースから得た根拠を積み重ね、定義化を試み、その定義に基づいて実践し、新たに根拠を積み重ねてきた。そして左記については、ある程度の定義化を行なうことができた。参考)『クライエントを支えるチームを構築するための「連携」アプローチについての一考察』
面接技術だけでは、インテークとアセスメントまでにしかリーチできない。
その先まで歩を進めるには、「ゴール設定&プロセス生成能力」が必要だ。
論理的に物事を考え、目指すべき到達点を設定し、それを阻害する要因の洗い出し、到達点に達するための必要なプロセスをきちんと踏んだり、そのプロセス生成のために、材料を(人やモノや制度活用)見出していく、ということ。
このプロセス全てに必要なのは、コミュニケーションをデザインする、ということなのだと考えるに至った。
現場で用いる全てのコミュニケーションには目的がある。
ソーシャルワーカーとして、様々な対象に行なうアプローチを、コミュニケーションにまで細分化し考えていくことによって、「患者さん家族の利」という目的を達成するために用いる種々のプランニングは、より精度の高い有効なものになる。
ここでいうコミュニケーションは「自分が相手にしてほしいこと(求めること)と、相手がしたいことを擦り合わせ、お互いにとってよい選択に着地させるプロセス」と定義できる。そして、そう定義すると、戦略も立てられる。
例えば、相手のモチベーションや職業的価値観、相手の好むコミュニケーションのスタイル、相手の手持ちの資源(時間、能力など)など、そういった事柄を勘案した上で、どうアプローチするかという戦略を立てられる。そして、アプローチをおこなう上でのコミュニケーションをどうデザインするかということを考えることが出来る。
日々、それらを意識して積み重ねていくと、「better」コミュニケーションの打率があがる、というのが実感としてある。
この実感を、既存の知に結びつけるために、コミュニケーション論の本を色々と読み漁ってみて、ソーシャルワーカーとして、“コミュニケーションをどうデザインするか。”ということを突き詰めてみることは、非常に意味のある、価値ある作業になるだろうと思うに至った。
いまはまだ実感レベルではあるけれど、言語化をすすめ、“コミュニケーションをどうデザインするか。”という問いについての考えを深めていきたい。そして、定義化を試みたい。
自己表現としての言語化。
コミュニケーションデザイン。
この2つを組み合わせることによって、現場での仕事にとどまらず、様々な価値のプレゼンテーションをする上で、活きてくるのだと思っている。
学ぼう。そして、実践しよう。それしかないのだから。