「環境」にアプローチするということについての省察
ソーシャルワークにおける「環境に働きかける」ということについて、少しずつ具体的な言葉で語れるようになればなるほど、学生の時に学んだ「ソーシャルアクション」という言葉の実現可能性のハードルの高さに気づいてしまう自分がいます。例えば、患者さん家族と医療スタッフとの関係性を例に出してみます。
ソーシャルワーカーとして、患者さん家族と医療スタッフの関係性という「環境」に焦点を当てたとき、本来治し癒すためにあるはずの関係性が、患者さん家族のストレスになったり対処能力を阻害させる要因となっていると評価したのであれば、まずそこにアプローチをすることになります。
ここで難しいのは、ソーシャルワーカー自身がそのスタッフたちとよい関係性を築けていなければ、結果、チームとしての対処能力は低下してしまうかもしれない、ということです。
それを固持しつつ、患者さん家族と医療スタッフの関係という「環境」にアプローチすることは、ときにワーカー自身の中に矛盾を生み出しかねません。
というのは、この部門(人)と患者さん家族の関係にアプローチする必要がある、と評価するが、それを遂行することによって、ソーシャルワーク部門と当該部門(人)との関係性が(ネガティブに)変化してしまう可能性があるからです。
ですから、組織内の力動を見積もり、理解するということが前提にないと、患者さん家族と医療スタッフ(他機関含め)との関係性に焦点をあてアプローチするということは、実は非常に難しいのです。
ソーシャルワーク部門でスタンドプレーで成立することはほとんどありません。
正論を振りかざして、チームを空中分解させてしまうようでは、「クライエントの利」を考える上で、本末転倒になってしまうわけです。
ときに、ソーシャルワーク部門が、ケースにおける事実の確認・交通整理をし、チームで共有できる状態にすることで、チームがケースの全体像を見通すことができるようになり、結果問題解決がなされることがあります。
土壌をつくったり、道を舗装したりということも、「環境」にアプローチするという重要なソーシャルワークの仕事なのです。
上記、「環境」にアプローチする、ということについて、私自身が苦心して得た言葉はそれほど多くありません。今後、もう少し深堀して考えていきたいと思っています。
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