【話を聴くために必要なことシリーズ2 -クライエントに語ってもらうために気をつけるべきこと】

公開日: 2012/09/20 MSW 思索 話を聴くために必要なことシリーズ

「HYが1年目の新人ソーシャルワーカーさんの教育サポート係になったら〜」と仮定しお送りしている【話を聴くために必要なことシリーズ】第2回目は「クライエントに語ってもらうために気をつけるべきこと」と称し、クライエントの「語り」というソーシャルワーク援助の素地になる部分について記していこうと思います。




【話を聴くために必要なこと-面接導入編- まとめ 】

0.面接前の事前準備を行う。(客観的情報を収集しよう)
1.クライエントとの出会いの場面で、しっかりと自己紹介をする
真摯で誠実なる態度表明をしよう)
2.クライエントと面接の目的を確認する
クライエントの問題解決に対する動機づけがどのような状況にあるかを教えてもらう)


・事前準備を怠らないこと。
・クライエントに対する真摯で誠実なる態度表明をすること。
・クライエントの問題解決に対する動機づけがどのようなものかを確認すること


の3つをあげました。


その上で、今回は「クライエントに語ってもらうために気をつけるべきこと」
=「クライエントが安心して語ることのできる場をどのようにつくるか」ということについてお伝えしていこうと思います。


ソーシャルワーク援助を行う上で、一番の情報源は、
当然、クライエントが語る言葉(一次情報)です。


危機的介入を除けば、クライエントが、今自身が置かれている現状をどのように捉え、どのように考えているか、ということがソーシャルワーカーとの間で共有されなければ、援助はその先に歩を進めることができません。


であるからこそ、「クライエントが安心して語ることのできる場をどのようにつくるか」ということが大切になってきます。


以下に5つのポイントをあげました。


1.クライエントの温度を感じとろう。
2.クライエントのコミュニケーションのテンポに合わせよう。
3.クライエントの語る言葉の「感情・論理のバランス」に注意を払おう
4.クライアントの発する非言語のメッセージに注意を払おう
5.そして、まずは、聴こう。


少し長くなりますが、上記ひとつひとつについて説明をしていきます。
(多くは、一般的な日常生活上のコミュニケーションでも言えることです)


1.クライエントの温度感を感じとろう。

「温度感」とは、クライエントの、その日の面接の場にのぞむモチベーションや、その日の気分、体調、現在の物事に対処するための力の具合、そういったものが濃縮された、「面接場面でソーシャルワーカーが感じる、クライエントの雰囲気・空気感」のようなものです。


クライエントからソーシャルワーカーが肌で感じる違和感の集合体」

とでも言えるかもしれません。


「温度感」といういささか抽象的なことから、明確な情報が得られるわけではありません。ですが、継続的に面接を重ねる上で、クライエントに起こる様々な事柄の変化に伴い「温度感」は変化していきます。


そして、変化の変遷を意図的に読み取るには、クライエントの「温度感」にソーシャルワーカーが敏感にアンテナを立てておくことが必要です。



「あれ、前回の面接の時となんだか雰囲気、イメージが違う」とクライエントから、感じるということ自体が、援助において大切な情報を得る上でのヒントになることがあります。


ですから、「クライエントの温度感を感じとろう。」という敏感なアンテナをソーシャルワーカーが作動させておくことが大切です。


ひとつ付け加えておくと、その場でソーシャルワーカーが感じる「クライエントの温度感」の要素に「ソーシャルワーカーの存在」も含まれているのだという認識が必要です。


ソーシャルワーカーはクライエントを「観察する傍観者」ではありません。
「両者の関係性」という要素が、「クライエントの温度感」に影響を与えることも多いにあり得るということを忘れないでください。


2.クライエントのコミュニケーションのテンポに合わせよう。

「コミュニケーションのテンポ」とは、相手の話す言葉の早さや、発語がどのようなテンポで成されるか、感情のこもった抑揚のある話し方か、それとも冷静な淡々とした語り口か、などの要素から形作られるものです。



クライエントの話しやすいテンポ、つまりはクライエントのコミュニケーションのテンポに合わせ、同様の形態でコミュニケーションを行うことで、クライエントに不快感を極力与えること無く、コミュニケーションスタイルをとることができます。



例えば、冷静な語り口の相手に、抑揚のある感情的な話し方をするのではなく、同様に冷静なゆったりとした語り口で話をする、といったようなことです。



誰しも、心地よい、話しやすい、コミュニケーションのテンポというものがあります。

話しやすい場という、ソーシャルワーク援助の素地をつくる上で、コミュニケーションのテンポに留意することは大切なことです。



3.クライエントの語る言葉の「感情・論理のバランス」に注意を払おう

これは、「2.クライエントのコミュニケーションのテンポに合わせよう」と似ているようですが、「テンポ」ではなく、クライエントが語る言葉の比率が、「感情と論理のどちらに傾倒しているか」ということを注意深く観察するということです。



「感情と論理のバランス」はソーシャルワーカーに多くのことを教えてくれます。



例えば、感情だけが先走り、物事を論理的に整理することが難しい状況にクライエントがいるとき、「まずはその感情に対しどう対処するべきか、もしくは、その感情の意味するところはなにか」というソーシャルワーカーがクライエントの感情を引き起こしている要因にアプローチするか否かの判断をする材料になります。



論理が先行する場合、それを「冷静に現状に対処できる力がある」とクライエントの力を見積もるか、もしくは、不自然過ぎるまでに冷静で論理が先行しすぎる場合は、「クライエントをそうさせている理由が他にあるのではないか」という推察をソーシャルワーカーにさせることになるのです。



ですから、クライエントの語る言葉の「感情・論理のバランスに注意を払う」ことは大切なポイントです。



4.クライアントの発する非言語のメッセージに注意を払おう

これは自分で書いておきながら、学部の教科書でも触れられている学生さんでも十分に理解できることなので省略します(笑



ソーシャルワーカー自身がクライエントにどのような非言語のメッセージを発しているか、という振り返りや自己覚知も必要です、と一言だけお伝えしておきます。



5.そして、まずは、聴こう。

そして、やはり最後はこれにつきます。


専門家ぶらず、まずはクライエントの話を聴く。
説明に傾倒せず、まずは、クライエントの「今」を言葉にしてもらう。


クライエントの語る「今」を、ソーシャルワーカーが共有することができてはじめて、「どのような問題を、一緒にどのように対処していくことができるか」という援助の青写真を描くことができるのです。


ただ「聴く」ことは誰でもできるようで、じつはソーシャルワーカーの「聴く」は様々なものの上に成り立ち、それゆえ、専門的な技術として、ソーシャルワークの主戦場として在り続けるのだ、ということを少しでも感じ、考えていただけたらこのエントリを書いたわたしも嬉しいです。


ということで、【話を聴くために必要なことシリーズ】次回の第3回は「面接における質問について考えよう」と題し、面接場面でソーシャルワーカーが行う「質問」についてお伝えしていこうと思います。


もし、こんなテーマが聞きたい!などということがありましたら
wish0517○gmail.com(○を@に)までメールをください。


それではまたー!


【参考書籍】


レビュー記事:面接法(Books)




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