何のためのソーシャルワークか?という問いがもつ意味について考える
公開日: 2012/08/15 MSW SW解体新书制作委员会 思索
最近、西村佳哲氏の著書「なんのための仕事?」を読みました。西村氏は様々な肩書きをお持ちの方ですが、本書は「働き方研究家」として多くの方の働き方にフォーカスしてインタビューを行ったものをまとめたものです。
その中で、西村氏は以下のように語っています。
「各職能領域は異様に洗練されたマニアックな同好会のようになって、自分たちが新たに獲得すべきトレンドを常に探し続ける。薪がないと火を維持できないので」
「なんのための仕事? 著:西村佳哲氏」より抜粋
現に、認定社会福祉士は、「マニアック同好会」の最先端を行くものでしょう。
日本のソーシャルワークは分節化し、各々のマニアック語りに終始し、「なんのためのソーシャルワークか」について語ることの意味を考えることを放棄してしまったように感じます。
本エントリでは上記を踏まえた上で、「何のためのソーシャルワークか?」という問いが持つ意味について、記していきたいと思います。
内田樹氏は著書「街場の教育論」の中で「内輪のパーティ」という表現で以下のように記しています。
専門教育というのは「内輪のパーティ」のことです。そこは「専門用語で話が通じる」場所です。あるいは「通じることになっている」場所です。そこでは、「それはどういう意味ですか?」という術語の定義にかかわる質問をしてはいけません。あるいは「この学問領域はなんのために存在するのですか?」とか「あの人はなんで偉そうにしているのですか?」という質問は許されません。
(中略)
ところが、「内輪のパーティ」だけでは、専門領域は成り立ちません。ある専門領域が有用であるとされるのは、別の分野の専門家とコラボレーションすることによってのみだからです。
(中略)
他の専門家とコラボレートできること。それが専門家の定義です。他の専門家とコラボレートできるためには、自分がどのような領域の専門家であって、それが他の領域とのコラボレーションを通じて、どのような有用性を発揮するのかを専門家に理解させられなければいけません。
「街場の教育論 著:内田樹氏」より抜粋
流行の「他(多)職種連携」の話をしたいのではありません。
もっと、広義の「専門家」同士として、ソーシャルワーカーが他領域とコラボレートするとき、「なんのためのソーシャルワークか」という問いを持つことなしには、内田氏の言う『自分がどのような領域の専門家であって、それが他の領域とのコラボレーションを通じて、どのような有用性を発揮するのかを専門家に理解させられなければいけません。』という「専門家であるための要件」を満たすことはできないと思うのです。
「なんのためのソーシャルワークか」という問いは、「今の時代がソーシャルワークに要請するものは何か」という問いを併せ持ちます。自分と他者、自分と社会、色々なリーチで物事をはかれる物差しがなければ、その問いに応えていこうとすることは難しいのです。
「自分と他者、自分と社会、色々なリーチで物事をはかれる物差し」は、目の前にいる人、物事に対して真摯に向き合い、獲得していくしかないと私は考えています。
目の前のことをないがしろにして、得られるものなんて何もないのです。
輸入された理論や横文字の概念をパッチワークすることでつくられたソーシャルワークは、ソーシャルワーカーを支えてはくれないでしょう。自身で、粘土細工のように手あかをつけまくって、形作ってきた言葉で表現されたソーシャルワークこそが、ソーシャルワーカーを支えてくれるのだと思うのです。
「粘土細工のように手あかをつけまくって、形作ってきた言葉で表現されたソーシャルワーク」をどう得ていくか。それを得た先に「なんのためのソーシャルワークか?」という問いに応えられる境地があるのでしょう。
「粘土細工のように手あかをつけまくって、形作ってきた言葉で表現されたソーシャルワークを、ソーシャルワーカーたちがどう得ていくかのか?」
これは、今後自分が立てていく企画に共通する根源的な問いになります。
自分はここに挑戦したい。それがSWの明るい未来に寄与すると信じているのです。
ここ最近、自分が企てたいモノゴトの見取り図みたいなものをつくる機会があり、まず目指すべきは「問い、教える」という学びの共創を目指す場づくりだと気づくことができました。そのための仕組み作りと試行錯誤の時間に28歳の1年は充てようと思っています。
なんのための仕事か?
なんのためのソーシャルワークか?
どちらの問いに対しても、その問いに対し、わたしは主体的に向き合っていきたい。
誰かがいつかやってくれるだろう、ということでなく、「これは自分の仕事なのだ」と自分の手で引き受けて、それをカタチにしていこうとするそのプロセスを大事にしたい。
そんなふうに今は思っています。
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