書籍紹介)『めんどうな人を サラリとかわし テキトーにつき合う 55の方法』著:石井 琢磨

公開日: 2015/01/28 勝手にブックレビュー 読書記録


弁護士の石井 琢磨さんが2冊目の著作を出版されました。

私は過去に、石井さんの講義を受けたことがあるのですが、
難しいことをやさしく説明することがとてもうまく、本書のキーメッセージである、
目の前の出来事にどのような反応をするかで、未来は変わる。 」
についても、日常の仕事で誰もが遭遇するであろう場面を例に出して書かれています。

石井さん自身が弁護士であり(法律を通した対人援助と言えると私は思っています)、本書の中にも、ソーシャルワーク業務にも応用できる考え方がふんだんに盛り込まれていました。その中からひとつを紹介します。



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以下、「権限がない人と話すときに注意すべきこと(P222)」から抜粋。

他者との間で何らかの話をする際、まず意識すべきは「話す相手は目の前の人でいいのか?」という点だ。十分な知識がない人、決定権がない人と話すのは時間のムダである。 
(中略) 
担当者が消極的で、上司の反応を気にしていたり、「会議に通らない」「本部が承諾しない」と他の判断者の目を常に意識しているタイプだとたまったものではない。 
(中略) 
このような人には、「何とかがんばって」と精神論で励ましても効果がない。あなたの提案を通すより、上司の意見にそのまま従ったほうがラクなのだ。だから、いかにも上司が反対しそうな提案は、伝えること自体を嫌がる。 
(中略) 
そこでまずすべきは、相手のマインドを変えることだ。 

その方法のひとつが、相手にラクをさせる方法を考え出すこと。
相手の上司に伝える情報をまとめたり、伝え方を伝える。「こう伝えればいいのでは?」と方法論を教えるのである。 
(中略) 
相手とこのようなやりとりを続けていると、上司を説得するための共同作業をしているように錯覚してもらえる。 
いつの間にか、 
「上司・担当者」対「あなた」 
という構図が、
「上司」対「担当者・あなた」 
という構図にシフトしていくのだ。  
他に、「じゃあ私が(上司に)伝えましょう」とダイレクトに言う方法もある。

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いかがでしたでしょうか?

これは、例えば、行政や関係機関とのやりとりで、末端の職員とではなんとも話がうまく折り合わず、係長などの権限をもつクラスの人と話を詰めなければなんともならない、という状況に陥ること経験はどなたもおありだと思います。


その際、「あなたでは話にならない」と相手を詰めるのではなく、上記のように、
「相手の困りごとを察知し、相手に楽を(気持ち的にも)してもらい、行動をしてもらいやすくする」という方法論をとれる方は、俗に言う「敵を作らず、うまく関係性を築ける人」だと私は考えます。


相手を非難し「アンタでは、話がわからないから、上を出せ!」と破壊的コミュニケーションをとる人もいますが、担当者の方との関係性は今後も続くわけですので、これでは今回の仕事を次の仕事に活かすことができません。


「今、この仕事を、この担当者と一緒に行う」ということを、未来の仕事に活かすためにとるべきは、「相手を罵倒したり、責めて詰めたりする」ことではないことは明らかです。


「相手のマインドを変える」
「相手にラクを(気持ち的にも)してもらえるよう一緒に考えたりする」


この2つは、とても大切なことだと思います。


このほかにも、「相手が約束の時間を守らない時」、「第三者からの情報は簡単に信じない(誰がどのように発言したのかを確認する)」なども、ソーシャルワーク業務に参考になりそうなものがたくさんありました。


そして、私の中で印象的だったのが、あとがきで書かれていた、
著者である石井さんが本書を書くに至った理由について書かれた文章です。

石井さんのお父さま(60代)が、がんが骨転移をし下半身麻痺になり、医師から麻痺は治る見込みがないと医師から病状説明を受けたのち、石井さんご本人は、お父さまにどのような言葉をかけたらよいかを迷ったそうです。そのとき、以下の3つの選択肢が浮かんだと言い、以下のように述べてらっしゃいます。



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医師たちが去り、病室が静まり返った。私は父に何と声をかければいいのか。 

・「どうすればいいのかわからない」と困惑を示す。
 
・「仕方ない、今できることをしよう」と開き直る。 
・医療を疑う。 

この中で私のした選択は「医療を疑う」だった。
「医者がそう言ったからといって、決まったわけじゃない、医者がダメだと言っても、治った例は山ほどある。医療でわかることなんて大したもんじゃない。だから、とりあえず飯を食え」
あとがきより抜粋



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その言葉をきっかけに、お父さんもリハビリに意欲をもって取り組まれ、1ヶ月経った頃には「俺はまた歩けるようになるのだから」と、車の処分も拒否され、さらに1ヶ月後、足を引きずりながら孫と歩けるようにまでなり、車の運転もし始めたとのこと。


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これほどまでに回復できたのは、本人の意思と家族の献身的な支えがあったからだろう。だが、最初の反応の時点で、「医師の言うことは絶対だ」と思い込んでいたら、ここまで回復できただろうか。宣告直後の反応が分岐点だった可能性も否定できない。 
常日頃、法律相談に来る人を見ていて思うのは、問題に取り組まれて苦しんでいく人と、あっさりと問題を乗り越えて楽しんでいる人がいるということだ。 
目の前の出来事にどのような反応をするかで、未来は変わる。 
ある反応をすれば、決まり切った檻の中での結果しか出ない。違う反応をすれば、世界が開けて見える。その反応は、あなた自身の人生を変えるだけではない。あなたの反応を見た人の人生を変え、やがて社会を変えていくのだ。 
あなたがめんどうだと感じたとき、どのように反応するか。そこが分岐点だ。あなたの目の前には、本文にもあるように、少なくとも3つの選択肢がある。それぞれが違う未来につながっている。どの未来に社会を導くか、それはあなたの反応次第なのだ。
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私はあとがきを読んで、

「ソーシャルワーカーたちが、困難な状況下にあるクライアントの方にかける言葉や反応、態度が、クライアントの方の未来をどうつくっていくかということに影響を与えるかもしれない、ということを常に胸に止めていくこと」

の大切さに改めて気付かされました。


ご興味がある方はぜひ、読んでみてください!オススメです!!




1冊目のこちらもオススメです。




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