アセスメント能力を向上させる方法〜想像力と論理的思考を鍛える〜

公開日: 2014/06/04 CW MSW 教育 研究 研修 思索




「アセスメントは難しい」、「アセスメントはまず情報収集から」などという言葉を聞くことがあります。本エントリでは「アセスメント能力を向上させる方法〜想像力と論理的思考を鍛える〜」と題し、私の考えを述べていこうと思います。




私は、アセスメントを、「見立て」と表します。

なぜなら、アセスメントとは、単なる情報収集等ではなく、クライエントとその周りに起こっている物事たちをもとに、とある「枠」を用いて、見取り図を描くことだと考えるからです。


以下、図を用いて、その流れを説明します。







1.援助者とクライエントが共有し、問題解決に向けて取り扱うべきものごとにはさまざまなものがある



援助者が面接場面でクライエントから得た情報や、その他客観的な情報は、クライエントとその環境の中に点在しています。まずは、この情報を、クライエントの問題解決をサポートするために「活かす」ことが必要になります。これが、アセスメントの過程です。





【2.クライエントとその周りに起こっている物事たちは、常に変化し、一点には留まらない



ですが、援助者が面接場面でクライエントから得た情報や、その他客観的な情報は、いくらでも増えていき、得ようと思えば、様々な情報を得ることができます(援助過程に不必要な情報まで得ようとするのは、アセスメントの意味が理解できていない証拠です)



増え続けるものごとやそれに付随する情報は、さまざなま意味付けを求め、決して一点に留まってはくれません。





【3.アセスメントにおいて、援助者はまず、「枠」を用いて、クライエントとその取り巻く環境を把握しようとする





ですが、「枠」をはめれば、物事は「枠」の中で動きを制限され、枠の持ち主(つまりは援助者)が、物事の動きの全てを把握できます。この
構造をもつのが、”アセスメント”だという自覚があれば、その限界に気づけます。



 「枠」はひとつではないし、ひとつでなくていい。色々な枠をもち、都度、どの枠を用いるかを選択することができることは、アセスメントの概念を多様化します。



【4.想像力の欠如は、アセスメントの際に採用する枠組みを小さくさせる】





想像力の欠如は、どうしても援助者の採用する「枠」を小さなものにしてしまいます。この際、枠の外にあるものは、援助者にとっては「無かったもの」になります。



ですから、想像力の欠如は、枠組みを大きくすることを妨げてしまうのです。それにより、クライエントヘの豊かな想像力は失われ、ともに共有できるものごとの範囲も非常に狭まり、クライエントと共有できるものは非常に少なくなり、適切なアセスメントからは遠のくことになります。




【5.想像力の有無が、アセスメントの際に採用する枠組みの大きさを意図的に変えることができることに繋がる】



より大きな枠組みで、クライエントと、その周りに起こっている物事をとらえることができれば、より豊かなイメージをクライエントとともに共有することができます。


それにより、クライエントとその周りに起こっている物事たちをもとに、とある「枠」を用いて、見取り図を描くことにおける、見取り図を描くための「台紙」が大きなものになるのです。




【6.大きな台紙の上に描いた見取り図をもとに、ものごとの優先順位を共有する】




私は、アセスメントを、”見立て”と表す、と述べました。
援助者として一緒に見せてもらえる・見えているものごとたちを「枠」を用いて、想像力という限界性のある地図の中に、マッピングしていく。そうすると、ものごとたちの相関関係や優先順位がみえてきます。


なので、いつも、患者さん家族と自分のまんなかには、小さかったり、大きかったり、都度違う枠によって規定された地図を広げているイメージがあります。ときに、実際に紙に書いて、色々マッピングして一緒に可視化させてもらうこともあります。まあ、これはエコマップを一緒に書くという手法の変形なのですが。

「枠」によって規定された地図の大きさが異なるのは、援助者の想像力という射程距離の問題です。ものごとを、地図の上にマッピングするために必要なのは、過去・現在・未来の道程・イメージの共有と、ロジカルにマッピングされたものの優先順位と相関関係を見出だせる能力です。


だから、アセスメントには想像力と論理的思考の両方が必要なのです。


アセスメントシートを埋める行為は、アセスメントではなく、援助者を安心させるためのチェックリストのチェックだということは理解しておきたいところです。


アセスメントには想像力と論理的思考の両方が必要ですが、既存の専門職研修は、そういった前提条件のもとで研修立てがされていません。ですので、両者を両輪にしたアセスメント能力は、研修だけで身に付けることが難しいのです。


そこで、おススメしたいのが「書く」というトレーニングです。


書くという行為は、言葉を取捨選択し、言葉で構造物を創り出すに等しいので、想像力は鍛えられるます。かつ、それなりに長い文章を書くには当然、論理的に文章を組み立てることが必要になるので、アセスメントに必要な”想像力”と”論理的思考”の両者は鍛えるいい自主トレになるのです。


アセスメント能力を鍛えるため、「この項目は必須です!」ケアマネジメントの考えを用いて…」とかいう研修受けるのであれば、日々自主トレとして実施可能な、書く力を鍛える方が、私はよっぽどいいと思っています。


ということで、原稿用紙10枚を書く力、をご紹介します。





私は、研修を仕掛ける側が、意図して「機能的な枠組み」を用意せず、 講師にテーマだけで丸投げすることが問題だと常々思ってきました。


過去何度も言ってきたのですが、実践で稼働できる力と、教育的機能は、必ずしも正比例しないのです。


だからこそ、そのことを勘案した上で、実践で稼働できる現任者の能力を最大限に、「教育的」機能に落とし込むための、機能的な枠組みを用意する必要があると思っていますので、来年度は、「想像力と論理的思考を鍛えることで身に付くアセスメント能力」という研修を企画したいと考えています。


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やらなければならないこと山積です。

業界をよくしたいと思い、少し余力がある人たちが、各々頑張って、ときに連帯して、この業界を底上げし、盛り上げ、もり立てていけたらいいな、といつも思います。

多くの援助者の人たちが、クライエントに対して、ひとりぶんのパワーでしっかりと、その人たちを支えることできる、そのような援助者の人たちを下から底支えする仕組みが必要だと私は考えます。

そこに寄与できるよう行動していきたいと思っています。

【アセスメント力をあげる必須の2冊です】
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