”行動は「問い」から生まれる”〜シリーズ『対人援助職として「問いを立てる力」を鍛えるための3つのエントリ』〜
公開日: 2013/10/18 SCA エッセイ キャリアデザイン 思索
言葉にするという行為の前提には「問い」があります。
「私はこんなソーシャルワーカーになりたい」という言葉は、
「あなたはどんなソーシャルワーカーになりたいですか?」という問いへのこたえです。
こたえという名の言語化が為されるとき、
そこにはいつも「問い」があります。
だからこそ、「問い」こそが、言葉を生み、行動を促し、
ときに習慣さえ変える、ということをわたしは信じて疑いません。
良質な問いが立てられれば、思考や行動は変わります。
「問い」は着火点であり、宇宙でいうところのビックバン
のようだと私は思っています。
私は長い間実践に身を置いているわけでもないし、
まだ発展途上のソーシャルワーカーではありますが、
その過程で得た「問い」を基点に、行動に移すということを
身体に叩き込むことができました。
「言葉にする」ことを続けてこなかったら、
「問いを立てることのできる身体」の獲得は難しかったでしょう。
本エントリから数回シリーズで、『対人援助職として「問いを立てる力」を鍛えるための3つのエントリ』をお伝えします。初回の本エントリでは、まずは、「問い」の輪郭を浮かび上がらせてみようと思います。
………………………………………………………………………………………
1.「質問をする」という行為から”わかること”
2ヶ月に一度定例開催している「ソーシャルワークを語る会」にて、
参加者の方の自己紹介のあとに、各自が他の参加者の自己紹介を
聞いた上で「もっと聞きたい質問」を考え、そしてその質問に
各自が答える、ということをアイスブレイクを兼ねて行なっています。
「人の話を聞いて、自分の中に生まれる質問」は、
「ここが気になる」という自身の「興味」と言い換えることができます。
「この質問をしたい。これを聞きたい」というのは、
他者の話を膨らませるという側面以外にも、自分自身の
興味や関心ごとを知る上でのヒントにもなり得ます。
自分の興味関心を知るための「質問」を考える上でのひとつのポイントは、
質問を「頑張って捻り出す」ことをしないことです。
頑張って捻り出した質問は、イコール「考えて作り出した質問」です。
自分の興味関心のアンテナを知るためには、
「相手の話を聞いてパッと出てくるキーワードやイメージ」を大事にして、
簡単で単純な質問でいいので、「あまり考えず」にすることが肝要です。
………………………………………………………………………………………
2.問われる環境が与えてくれるもの
「問われる環境」が与えてくれるのは、「考えるための材料」です。
自分で問いをつくるためには、気づきを積み重ねて、
それを問いにまで昇華せねばなりませんが、誰かが
自分に質問をしてくれれば、質問の分だけ、書く、
言語化する材料は増えることになります。
「問われる環境」の例を具体的にあげると、例えば、
現場で働いている方が、大学から実習生を受け入れた
ときなどがそれにあたります。
「問いの質」や実習生自身のモチベーションは
考慮にいれないにしても、学生の実習での本分は
「実習で、気づいたことをもとに問いを立て、
それについて考え、学ぶ」ということであるはずです。
ですから、実習生自身が気づいたことから問いを
立てるための補強材としての「質問」を、現場の人間にしているはずなのです。
実習生の気づきを問いに昇華させるための「質問」を受ける現場の人間の側にも
「問われることで生まれる新たな問い」が生じます。
「学生は、なぜこの質問をするのか?」
「学生は、こんな気づきをしたのかな?」
「こういう質問をされたけれど、最近そのことについて考えたことはなかったな」
例えばこのような、問いが生まれるかもしれません。
問われることで、気づき、考え、新たな問いを生み出すことができる。考えるための材料が得られるのです。だからこそ、「問われる環境」は「言語化」を続けていく上で、とても大切です。
上司に突っ込まれたりしたときも、上記の「問われる構造」を頭の片隅に
置いておけば、「考える材料をもらえて感謝!」と思えるかもしれません…笑
………………………………………………………………………………………
3.問いの射程距離を拡張することで得られるもの
私は、「問いの射程距離」という言葉を使います。
射程距離とは、「目的に対して充分に届くことが可能な距離」と言い換えられます。
山田ズーニー氏はこれを「問いを立てるエリア」と称しています。
以下、「話すチカラをつくる本http://goo.gl/Z0uzR」から抜粋します。
………………………………………………………………………………………………
問いを立てるコツは、「問い」を立てるエリアです。
時間軸:過去→現在→未来空間軸:身の回り→日本社会→世界
思考が行き詰まってしまう人は、「問い」を立てるエリアが狭い。
視野を自分から→相手へ、まわりの人へ
視野を自分から→自分のいる組織へ、社会へ、世界へ
視野を現在から→過去へ→未来へ
人、空間軸、時間軸を意識的に移動しながら、
できるだけ広いエリアにわたって問いを立てていくことが思考をのびやかにするコツ。
………………………………………………………………………………………………
これを踏まえ、私個人の話をさせていただきます。
先日、社会福祉協議会に勤務している友人と飲む機会がありました。
彼から以下の2つの語りを得ました。
「地域福祉は、究極的に、互いに笑い合える二者関係に帰結する。
そのためになにを成すべきか。」
「先達からバトンタッチされた社会福祉の哲学を、どう次の世代に残すか。
脆弱な足場ではなく、しっかりとした層として、どう残すか」
これは、彼の「問い」なのだと思うとともに、
まさに、山田ズーニー氏の言う
"視野を自分から→相手へ、まわりの人へ
視野を自分から→自分のいる組織へ、社会へ、
世界へ視野を現在から→過去へ→未来へ"
という、問いのエリアを移動しながら
立てられた問いだということに気がつきました。
問いにも「ミクロ、メゾ、マクロ」があります。
「人、空間、時間」の軸を移動し考えることで、「問いを立てるエリア」が
広がる。イコール、考える材料が増えることになります。
なにかひとつの問いを得たとき、その問いを上記3つの軸を移動させることで
新しい問いが得られることがあります。
問いを立てるトレーニングについては、
今後SCAで定期開催予定の「ソーシャルワーク言語化ゼミ」
でもテーマとして扱っていく予定です。
本エントリが、みなさんが”問い”について考える際の補助線になったなら嬉しいです。
………………………………………………………………………
”行動は「問い」から生まれる”
〜シリーズ『対人援助職として「問いを立てる力」を鍛えるための3つのエントリ』〜
〜次回予告〜
次回以降、以下についてお伝えしていく予定です。
思考の深度を下げるための”問いの立て方”
問いを立てるためのレッスン”定義化”
問いを立てるトレーニングで得られる”抽象化能力”について
それでは!!
………………………………………………………